ー日常ー街の住人達【5】

ー株式会社:インターナショナルー

車に乗せられ、連れてこられたビルの一室。普通のオフィスビルで何人かの人間がデスクトップパソコンの前で作業をしている。

的場「簡単に言えばオンラインショップなんですけど、このエキサイティングストリートはネット上に実際の商店街が3Dで完全再現される予定なんです。日本中の商店街が!世界中のお客が自動翻訳の助けを借りて共通のポイントで買い物ができる。」

人のいない席のパソコンを起動して何かのソフトを操作をすると、確かに画面にはズラリと商店街が並び、人が歩いている。

建物にカーソルを合わせれば文具店なら文具の商品リスト、酒屋なら酒の商品リストが表示された。

北斎「へー大したものですねえ。」

的場「そうでしょう!あちこちに売り込んでるときに絵里ちゃんのところの窮状を知りましてね。これは何としても力になりたいなと思ったんです。」

ニコニコと笑顔を浮かべてそういった。

北斎「……」

的場「絵里ちゃんちょっとやってみない?」

絵里「えー私こういうの苦手だから…」

的場「やってみて、もう白金の商店街はあらかた出来上がってるんだ。」

パソコンの前に絵里を座らせて横についてマウスを操作する。

絵里「うわほんとだ!うちのお店もある。」

的場「あなたもどうですか?」

北斎「いや…僕はこの位置がいいので。」

的場「位置?」

絵里「?」

的場「位置とは?」

北斎は自分の顔の左半分を指でトンットンッとつついていった。

北斎「いや、人の本心は顔の左半分に現れるという話をご存知ですか?」

的場「……」

北斎「よく見えますから。とてもよく、ね」


~~


一通りの説明を聞いて絵里と北斎はタクシーでホテルプラチナまで帰ることにした。車内で絵里は不機嫌そうに言った。

絵里「どうしてあんなに失礼なことばかり言うんですか!」

北斎「……ん?あの男怪しいよ。あまりかかわらないほうがいい。」

絵里「もう!北斎さん的場さんのこと何も知らないでしょ?あの人はねえ、これまでずっと休みの日に商店街の掃除を手伝ってくれたり。催し物を手伝ってくれたり、私たちと一緒に頑張ってきたのよ?」

北斎「君は信じるの?」

北斎は視線を窓の外から絵里へと向けた。

絵里「だって…疑う理由ある?」

絵里は仏頂面で毛先を指でいじっている。

北斎「そう…じゃあさ……『商店街の人たちが彼のことをなんて言ってるか教えてくれる?』」

絵里「……いいけど…」
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