ー日常ー街の住人達【5】

ー白金:商店街-

「あら、こんにちは絵里ちゃん」

「やあ、絵里ちゃん」

「絵里ちゃん、こんにちわ」

「絵里ちゃん、焼き鳥食べるかい?」

書店街を案内してくれるとのことで北斎は絵里と一緒に歩いているだけで、その知名度がうかがえた。

北斎「へぇ人気者なんだね。」

絵里「そりゃ地元だもの。この辺のことなら何でも聞いて……って……あら?」

今、話していた北斎がいない。店の中に入ったのかと辺りを見回していると。

北斎「ごめん、一瞬はぐれちゃった。」

絵里「なんで後ろ歩いてたのに前からくるの!?私、ひょっとして奇跡を見た!?」

北斎「はは、ちょっと方向音痴でね。」

苦笑いでそういった北斎だがそういうレベルではない気がする。

少女「絵里おねーちゃん」

少年「絵里ねーちゃんここにいるようになったの?」

學校帰りだろうか、ランドセルを背負った子供が話しかけてくる。

絵里は身をかがめて視線を合わせて話しだす。

絵里「そうだよーホテルの出張所がここにできるの。」

少年「へー」

少女「お客さんいっぱいくる?」

絵里「……もちろん!外人さんもいっぱい来てにぎやかになるよ。」

少女「うわぁーよかった!」

絵里は少女の頭を撫でて立ち上がった。

絵里「すいません。北斎さん、次行きましょうか。」

自分の髪を指先でくるりと撫でながら絵里はいった。

北斎「……えぇ。」

しかし歩きだそうとしたとき、車が横にとまって窓が開いた。

眼鏡の男「絵里ちゃん!うわ、いいタイミング!今お父さんと話してきたところだったんだよ」

絵里「的場さん!」

的場と呼ばれた男は車から降りて笑顔を向けてくる。

的場「あれ?このひとは?」

絵里「あ、経営アドバイザーの北斎さん」

的場「ああ、ホテルが呼んだっていう?よろしく」

手を伸ばしてきたので北斎は握手に応じた。

北斎「随分力強いですね。」

的場「ん?」

北斎「握手するとき必要以上にギュッと力を込める人はこちらに好意を抱いているか……もしくは威嚇とか挑戦といった意味があります。」

的場「……」

絵里「……」

的場「もちろん好意ですよ。僕があなたを威嚇する必要なんてありません。僕達はいってみれば仲間なんですから。」

北斎「仲間?」

的場「ええ」

絵里「北斎さん。エキサイティングストリートって聞いたことない?バーチャルショップ!」
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