ー日常ー街の住人達【5】

ー常春の国:エメラダ宮殿ー

ムーン4「買い手は兵庫県の絹問屋だ。打診を受けてフーズーフーで確認したところ江戸時代から続く老舗の第12代当主で名を銭谷官兵衛、略してゼニカン」

ミハイル「なんて福々しいお名前だろう」

チコ「絹問屋が60憶ももってますかぁ?」

ミハイル「説明すればわかる。先代が戦後まもなく化学繊維業界に乗り出し最近開発した超高性能繊維で大儲けしてるんだ。」

ムーン1「そう聞くと納得できるような……」

ムーン4「しかし気になるのは、人物評に釣り好きとか美食家とかは書いてありますが宝石のことには触れてないんです。」

ミハイル「だから最近になって宝石に興味を持ち始めたんだろう。という事は黒ダイヤを皮切りに次々に買ってもらえる可能性がある。すばらしいお得意様になるぞ!」

チコ「だといいんですが」

ムーン1「殿下の皮算用はちょくちょく外れるからなあ。」

ムーン4「殿下、銭谷さんから連絡がありまして、伊丹空港が嵐で封鎖されて飛行機が飛ばないそうです。」

ミハイル「えっ、じゃあ今日の商談は?」

ムーン4「キャンセルです。」

ミハイル「まずいな、下手に時間を置いてやっぱりいらないとか気が変わられたら……よし、こっちから行こう!国王専用機の用意!」

ムーン5「たいへんです!エメラダ空港でストです!」

ミハイル「なんだとー!原因は!」

ムーン5「おととい殿下が空港職員の給料を50%カットすると発表したからですよ!」

ミハイル「やむにやまれぬ事情があったんだから仕方ないだろう!」

チコ「事情ってどんな?」

ミハイル「急に節約したくなったのだ!」

チコ「そんな乱暴な身勝手な…」

ミハイル「やむえん!流星号で行くぞ用意しろ!」

ムーン1「あっ、すいません。流星号は洗っちゃいました。特殊な繊維だから乾くのに2.3日かかりますよ。」

ミハイル「うぬぬぬっ!仕方ない商談は延期するか」

ムーン4「殿下喜んでください!嵐が通りすぎたので飛行機が飛べるようになったそうです!」

ミハイル「おお助かった!」

チコ「殿下!スイスのサナトリウムからお電話が!」

ミハイル「ええい、なんだ!貸せ!えっ、母上の容体が急変!?スイスに行かなくては!うわああそうするとゼニカンとの商談が!!」

チコ「殿下、商談はあとでもできます!」

ミハイル「そうか考えるまでもない!スイスに行くぞ!」
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