ー日常ー街の住人達【5】

ー常春の国:エメラダ宮殿ー

チコ「以前池袋のあたりを歩いていたらペットショップの小鳥屋さんの隣に焼鳥屋さんがあったんです。いいのかなーって思ってて、しばらくして同じところを通ったら小鳥屋さんは潰れていて、動物病院になってたんです。」

「「「……」」」

チコ「なんていうか、ここの焼き鳥はちゃんと鶏肉を使ってるのかと考えちゃいましたよ。」

ムーン1「うーん、確かになぁ」

ムーン2「しかし」

チコ「はい?」

ムーン2「もし動物病院が潰れて葬儀社が引っ越して来たら……おい!この肉は食えるんだろうな!とかツッコみたくならないか」

ムーン3「ハハッ、ブラックだなぁ」

【ブラックユーモアといえば、つい一週間ほど前の新聞にのってた記事なんだけど社会保険庁のどこかの事務所が「出産・育児休暇」の手当てか何かを発想する時、間違って「埋葬料」と書いて発送したそうなんだけど。直前に埋葬料関係の仕事をしていたのでゴム印を間違えたらしいんだけど。水鼠】

ムーン1「実話?」

【実話。水鼠】

ムーン1「実話だとしたらこれこそ本物のブラックユーモアだなぁ」

ムーン2「出産と埋葬じゃ正反対だものな。」

ムーン3「当事者たちが笑う気分になれたとは思えないが」

チコ「ブラックユーモアってそんなもんじゃないですか。っていうか、今の誰ですか?」

ムーン1「いつからか宮殿の一角の階段下の物置に住んでる鼠だよ」

チコ「魔法使いなポッターですか?」

ムーン2「埋葬というとこういう話もある。ヨーロッパのある国で棺桶を埋めようと作業員が穴を掘り始めたらそこから古代の遺跡が出てきたんだ」

ムーン1「ええっ?」

ムーン2「そうなったら大変だ。学者は来る。マスコミは押し寄せる。学術的にも骨董品としても非常に価値のあるものが沢山出てきたのでこの遺跡の所有権は誰にあるのかという話になり、神父さんが墓地は教会のものなのだから遺跡は当然教会に属するといえば作業員は自分たちが掘り当てたのだから、我々にも権利があると言い張り、しまいには親族一同まで巻き込んで大喧嘩。誰も自分のことを思い出してくれないので個人が棺桶の中で……」

「「「ふむふむ」」」

ムーン2「すっかり腐ってたというお話」

「「「「うわぁ……」」」」

チコ「気分が滅入るという意味のくさると実際の腐敗をかけたオチですか」

ムーン1「これぞまさしくブラックユーモアだ」

ムーン3「しかしなんだな、ブラックユーモアとくると定番があるな。」

ムーン1「定番?どんな?」

ムーン3「有名なのがお正月に初荷の登りをあげて走る霊柩車」

チコ「あはは、聞いたことがあります。」

ムーン1「確かに有名」

ムーン2「仏様を燃やしてその熱で走る霊柩車ってのもあるぞ」

「「「ははははっ」」」

ムーン1「それも聞いたことある。」

チコ「って、なんとなく笑ってますけど、いいんでしょうか。考えたら全部ひとの死に関わってますけど。死とはもっと尊厳のあるものじゃないかと」

【その尊厳を茶化すからこそのブラックユーモア。水鼠】

チコ「うーむ」
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