ー日常ー街の住人達【5】

ー世田谷区:一戸建て住宅ー

奥様「あたしの娘と分かったとたん風当たりが強くなったわ!好き嫌いの多いひな子を給食を食べ終わるまで教室に残したり!授業中にわざと難しい質問をして、堪えられないと他の子より多く宿題を出したり細かいいじめを繰り返してるの!!体罰でもあれば問題にできるけど一つずつは細かすぎて学校に文句も言えないの!」

マリア「はぁ…」

奥様「本当に陰湿なのよ困ってる理由が分かった?虐めなんてとんでもないと思わない?」

マリア「奥さまにそれを言う資格があるかどうかは別として……確かに先生として取るべき態度ではありませんね。何とかできるといいんですが」

話していると大きなノッポの古時計というにはゴージャスすぎる壁掛け時計が五時の鐘を告げた。

奥様「塾の時間だわお願いね」

マリア「わかりました。」

塾の送り迎えも今回の仕事の一つ。なので玄関先に愛車を用意してある。

ひな子「よろしくお願いします」

マリア「はい、では行きますよ」

ひな子「ええでも……車じゃないのね」

四輪のキックボードっぽいもの子供とはいえ人間が二人のって軽く蹴るだけで自転車並みの速度が出るミーナさんが作った特殊(やや危険)な物。

時間通りに塾の前まで送り届けると手を振ってマリアはいった。

マリア「いってらっしゃいませ。あとでお迎えに参ります。」

ひな子「はい」

見送っていると、マリアの横を抜ける女の子こが居た。

マリア「おや……今の子の骨格は」

おマリには人相の特徴を的確に識別する能力があって、実はその才能を生かして似顔絵かきのアルバイトなんかもしている。

それはさておきすれ違った女の子の骨格すずピーとの著しい共通点を見てとったおマリはこっそり塾の中へと新入してささっと名簿を探しだしさっきの子の書類を見た。

名は鈴木順子、そして保護者の欄には……

奥様「すずピーの娘!?」

マリア「大きな塾ですからお子さん同士は知らないと思いますけどね」

奥様「チャーンス!」

マリア「え?」

奥様「目には目、歯には歯、いじめにはいじめよ!仕返しするチャンスだわ!」

マリア「ちょっとまってください!奥様なにを考えてるんですか!」

奥様「塾の講師の鬼瓦先生よ!」

マリア「はぁ?」

奥様「こないだ鬼瓦先生にお中元のハムの詰め合わせを送ったの!そしたら電話してきて!」

~~

鬼瓦『どうもお気遣いいただきまして、ハムは好物でして高級ブランデーのつまみに合うんですわ。高級ブランデーですよ高級ブランデー。ぐわっはっは』

~~

奥様「さりげなく催促されたのよ!」

マリア「さりげなくもないようですが」

奥様「あの先生ならきっと物で釣って動かすことができるわ!まってて!」

マリア「……(余計なことをいっちゃったかなぁ)」
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