ー日常ー街の住人達【5】

ー常春の国:エメラダー

それから日も暮れ始めた頃……

チコ「殿下は?」

ムーン1「まだ食べ続けてる」

チコ「マジですか……」

ムーン2「殿下はいままでもデブだったしオオぐらいだったが」

ムーン3「このところの食欲と太り方はすさまじいな」

チコ「……異常だと思いませんか?」

ムーン1「チコちゃん、なにか気になることでも?」

チコ「殿下の異常食欲が始まったのはちょうど一か月前です。」

ムーン1「一か月前というと」

チコ「妙に仕事のはかどった日がありませんでしたか」

ムーン2「あった」

チコ「朝から殿下が居なくてそれで仕事が進んだんです。」

殿下は夜中に帰って来て、話を聞いたら

ミハイル『キノコ採りだ』

ミハイル山のふもとにキノコを採りに行ってその場で食べたら、美味しいものだからもっとうまいキノコはないかとどんどん奥にわけいって……。

チコ「ふもとの黒い森からさらに奥にある妖魔の森に辿り着き、そこでお腹もくちくなり、疲れてもいたから昼寝をして気づいたら夜になっていたと」

ムーン1「うむ、確かそういう話だったね」

チコ「妖魔の森は妖怪が住み着いているといって誰も近づかないところですよね。」

ムーン2「ただの噂だよ」

チコ「噂じゃなかったら?」

ムーン2「な、なんだって!それじゃ君の考えでは!」

ムーン3「妖魔の森で殿下が妖怪に取り憑かれそのため異常な食欲をしめしていると!?」

チコ「そうじゃない証拠はないですよね。」

ムーン1「馬鹿な!殿下が妖怪に憑りつくことはあっても妖怪に取り憑かれることなんてありえない!」

チコ「強力な相手でしたら?」

一冊の本をテーブルにおいてあるページを開く。皆かそこを見ると【ぬっぺふほふ】という肉の塊みたいな妖怪が描かれていた。

ムーン1「殿下のお腹に……」

ムーン2「似ている…」

チコ「妖怪のビックスター「ぬっぺふほふ」です。もとは普通の人間だったけど異常な食欲を満たすため盗み食いを繰り返すうちに死亡で目も鼻も埋まってしまい、ついには人肉まで喰らうようになってしまった妖怪です。」

ムーン1「このままいったら殿下もいずれは……」

ムーン2「人間を食うように……」

ムーン3「ひぇっ」

ムーン1「このままじゃ殿下は大変なことになる!」

ムーン2「どうしたらいいんだー!」

チコ「落ち着きましょう。食料を断つしかないんですから。」

「「「えっ」」」

チコ「キノコを生で食べる卑しい食欲の持ち主とみて、憑りついたんでしょうし、また殿下の身分なら食べ物に不自由することはないと妖怪も安心しているに違いないはずです。そこで強制的にダイエットさせるんです。食事ができなくなれば殿下に取り憑いている意味もなくなります。」

ムーン1「そ、それはそうだが殿下がダイエットに同意するとは思えないなぁ」

チコ「そこで計略です。」
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