ー日常ー街の住人達【5】

ー池袋:喫茶店ー

例の家から出た足でマリアはある疑問をもって喫茶店に入った。そして一番安い飲み物を注文してテーブルにおつりを並べる。

砂糖と水とさらしあわせて千五百円。おつりは六千五百円。

なのにおつりを出せとかおつりで新しい買い物をしてこいとも言わずに、もう一枚二分金を寄越した。

という事は今度の雇い主はこれ(二分金)が八千円に売れることを知らない、価値を知らない。そうなると雇い主がこれをどこで手に入れたかが問題……。

倉を掃除していたら古い柳行李の中から第漁に出てきたとか?いや、なにか違うよな気がする。もしそうなら業者を呼んで堂々と売りさばけばいいわけで一枚ずつ渡して買い物させる必要なんかないはず。

一枚ずつというところが引っ掛かる。なんとなくコッソリというか後ろめたいことがある感じ。

つまり……盗品?

いや、古銭が盗まれたなんて話は聞かないしプロのドロボウなら故売屋へ持っていくだろう。

とすると、例えばあそこの住人が庭を掘り返したら壺が出てきてその中に古いお金がザクザクと、ところがあそこは借家で地主が他にいる。地下から出てきたものの所有権は当然地主にあるわけで住人は黙って自分のものに……。

そう考えるとなんだか後ろめたそうな感じもこの価値を知らないことも納得できる。値打ちを調べようとしてどこから持ってきたかと聞かれたらまずいから。

さらに家政婦をやとったことも説明がつく、ほんとは自分のものでないお宝を使う度胸がないのだ。だからひとをやとって使わせている。

この読みが当たってるとしたら、大儲けのチャンスかもしれない!!

先ほども言ったようにおマリはこのところ仕事がなくてロクに稼いでいません。借金を返済するために多少荒っぽい事をしてもお金が欲しいのです。

といって……

~~

マリア『黙っててやるから半分寄越せ』

雇い主『何!!ぶち殺してやるー!』


~~

マリア「てな風に刃物でも振り回されたらシャレにならない……よし、まずは住人がどんなやつか情報収集ですわ!!」

お金が絡むと普段の何百もの行動力を発揮するおマリはでんでん太鼓とかざぐるまを買って、また陰気な家にやってきました。

相変わらず何かの気配はあるのに静まり返った陰気な家。こんどは掴みのギャグを抜いて静かにドアをあけて、そろーっと中にはいった。

すると、「おんぎゃおんぎゃ」と泣声。人間の赤ちゃんの泣き声がするではないか!
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