ー日常ー街の住人達【5】

ーアラファト家政婦協会ー

おばさん「あたしのイトコの話なんだけどね。」

マリア「はいはい」

おばさん「新潟の佐渡島の子で高校生のころ友達の家へ遊びに行って夜遅くバイクで帰ろうとしたわけ。本通りまで一本道が通っていて途中で迷ったりするはずは絶対ないのに。道がどんどん細くなり、しまいには道が消えてしまったの。怖くなったので友達の家に戻ってその晩は泊めてもらい、翌朝同じ道を通ったら……なんてことなく本通りに出て無事に家へ帰りついたそうよ。不思議なこともあるものだと思ってね。」

※:実はこれ私のいとこから聞いた実話です。

おばちゃん「佐渡島はムジナで有名じゃなかった?」

家政夫「ムジナの正体は狸だってね」

おばあちゃん「その子きっと狸に化かされたのよ」

おばさん「そんなことってあるのかしら」

マリア「♪~~♪、♪♪♪」

おばさん「なにその曲」

マリア「アイネ=クライムナハト=ムジーナ」

「「「…………」」」

マリア「(おやあ?思ったより受けないなぁ)」

などとアラファト家政婦協会の控室(通称イモの穴)(意味は不明)で暇な家政婦(夫)たちがわけのわからない雑談をしていたら

家政婦A「ただいまー」

おばさん「あらっ」

おばちゃん「あんた仕事にいったんじゃなかった?」

家政婦A「行くには行ったんたけどさあ、気味が悪いというか、なにがなんだかわからないというか」

マリア「どうかしたんですか?」

その家政婦さんの話によると……。

今朝仕事先への地図をもらって出かけて、広尾の駅で地下鉄を降りて地図にしたがって細い入り組んだ道を歩いていったら、ここが本当に広尾なのと疑いたくなるような場所に出て。

地図にしたがって進むとうっそうとした木々に囲まれた石階段を見つけて登っていくとえらく古い建物があって声をかけてみても返事もない、仕方なく中を覗いてみるとやはり誰もいない。

けど、玄関先を見てみると……゜

家政婦A「玄関にメモとこのお金が」

おばさん「メモって」

四つ折りにされた紙には【さとうすい】【さらし】と筆で書かれた字が見える。

おばちゃん「さとうすい?さらし?」

家政夫「それにこれお金ったって昔のお金じゃないの」

ハッキリとはわからないカいわゆる古銭というものだ。

家政婦A「たぶんこれで買い物しろってことなんだと思うけど誰も出てこないし家の中は静まり返ってるしなんとも陰気だし、第一こんなお金でどうやって買い物するのよ。気味が悪くてね。今回のお仕事気が乗らないわあ。」

マリア「よかったらかわりましょうか?」

家政婦A「ほんと?おマリちゃん変わってくれる?」

マリア「いいですよ」

この業界、忙しいときはやたら忙しいのに暇になるときは本当に暇になります。
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