ー日常ー街の住人達【5】

ー都心:古若寮ー

でも先日、妻が買い物に出たとき…。

若嫁「あっ」

偶然というよりはわざわざ待ち伏せしていたように婦人たち三人と出くわした。

高飛車婦人「あーら。お宅、昨夜はすき焼きだったざますね。」

井矢見婦人「ですってねぇ。お給料日前なのになんて贅沢な」

若嫁「どうして…」

なぜか昨夜の食事の事がバレている。

小判鮫婦人「うちなんか鮭の切り身がせいぜいだってのに。」

井矢見婦人「お宅だけすき焼きなんて近所づきあいをどう思って」

高飛車婦人「だいたい若いうちからそんな贅沢を」

井矢見婦人「平社員のぶんざいで」

若嫁「……」

もちろん、すき焼きを食べようが食べまいが悪い事ではない。ないのだがねちねちとイヤミをいわれる羽目になった。


~~


若者「平社員がすき焼き食べちゃいけませんか!」

マリア「いや別に」

若者「なぜすき焼きの事を奥様達が知ってたか不思議だったんです!でも観察してたら分かったんです!部長婦人が分別のチェックと称してうちのゴミの中身を確認してたんです!」

マリア「ははあ、牛肉のパックと焼き豆腐、しらたき、春菊なんかの包装があればすき焼きだと推理できますね。」

若者「はい…」

ため息をついて肩を落とす若旦那にマリアは首をかしげていった。

マリア「でもまってください。ゴミの中には手紙とか請求書など人に知られたり見られたくないものもあるでしょう。それをあばくのは犯罪スレスレの行為です。プライバシーの侵害で訴えちゃどうです?」

若者「上司の奥さまを!?」

鬼気迫るものがありながら驚きとも困っているともいえる表情……。

マリア「……あぁ、分かってきました。文句を言いたいけれどいう訳にもいかない。この先もそんな生活が続くというフラストレーションのせいで」

若者「妻は倒れたんです!」

マリア「分かりました。今回の仕掛けは部長婦人を何とかするということ」

若者「ええ……え?」

マリア「仕掛けて仕損じなしっ!!」

そう叫びながら脱兎の如く家政婦マリアは部屋を飛び出していった。

若者「ちょっ!ちょっと待ったぼくはただ妻の代わりに家事をやってもらいたいと!」

叫び声空しくマリアの姿はすでに見えなくなっていた…。


~~


ー古若寮:高飛車宅ー

高飛車婦人「あーた、いつまで食器洗ってるざます。お風呂の掃除は?」

高飛車部長「これからやります」

高飛車婦人「ほんとにグズなんだから、そんなだからいつまでたっても部長どまりざます。」

高飛車部長「……」

家政婦スキルで壁に張り付いて窓の外から中の様子を確認し終えるとマリアはそのままカサカサと屋上まで登って電話をかけた。

マリア「もしもし本部ですか?たしかお熊さん警察病院に派遣されてますよね。連絡を取りたいんですが……。」
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