ー日常ー街の住人達【5】
ー都心:古若寮ー
あれは引っ越しの当日…
荷物の整理をしている最中にピンポーン!っとチャイムが鳴った。
女性「あなた!どなたかいらっしゃったわ!」
若者「この忙しいときに誰だ。まだなにも片付いてないのに」
ドアを開けると中高年の女性が三人。
眼鏡の女性「どうも」
若者「えーと、どちら様で」
高飛車婦人「お初にお目にかかるざます。あたくし高飛車(たかびしゃ)の家内でございます。」
若者「高飛車というと……高飛車部長の奥さま!!はっ、初めまして!第2事業部営業3課に配属になりました伊武ヶ崎です!本日こちらに入居させていただきました!荷物の整理が済み次第ご挨拶に伺うつもりでおりましたがおいでいただいて恐縮です!」
高飛車婦人「まずはあいさつ、荷物の整理などはそのあとというのが常識ざます。」
若者「……は?」
細い女性「ほんと一般常識を心得ないひとが多いですわねぇ」
太い女性「困ったものですわねぇ」
高飛車婦人「こちら井矢見(いやみ)課長と小判鮫課長の奥さまざます。」
太っている方が井矢見で細い方が小判鮫というらしい。形だけの笑顔で二人は会釈する。
「「どーも」」
若者「よろしくお願い…」
高飛車婦人「失礼するざます」
腰を折って挨拶している隙に三人の夫人が勝手に中に入っていく。
若者「まだ部屋の中が……!」
とつぜん見知らぬおばさんが入って来て伊武ヶ崎の若奥さんは困惑の表情を浮かべた。
女性「あの…」
高飛車婦人「まあなんて乱雑ざましょ」
若者「いえですから!」
止めに入ろうとする若者を無視してそこら中を練り歩き、ある一角で足を止めたと思うと叫ぶようにいった。
高飛車婦人「まあまあまあ!あの方角に淡いベージュのカーテンとはどういうことざます!赤地に緑の水玉模様にするべきざます!」
井矢見婦人「奥さまは風水の研究をなさってらっしゃるのよ」
若者「はぁ…」
そうしている間にもまた叫び声にも似た甲高い声が響いた。
高飛車婦人「こんなところにフランス人形が!!ドドメ色の仏像を置かないと病人が出るざます!」
~~
若者「というわけでインテリアをだいぶ交換する羽目に…」
マリア「それでわけの分からないものがいっぱいあるんですね。」
入って来た時から壁にはアジア地方のカラフルで謎の模様のタペストリーや仏像、金色の七福神の人形、謎の民族の彫像、果ては木魚(?)みたいなものまであったりする。景観というか、どれもこれもがいちいち目に痛い色で落ち着かない部屋なのだ。
あれは引っ越しの当日…
荷物の整理をしている最中にピンポーン!っとチャイムが鳴った。
女性「あなた!どなたかいらっしゃったわ!」
若者「この忙しいときに誰だ。まだなにも片付いてないのに」
ドアを開けると中高年の女性が三人。
眼鏡の女性「どうも」
若者「えーと、どちら様で」
高飛車婦人「お初にお目にかかるざます。あたくし高飛車(たかびしゃ)の家内でございます。」
若者「高飛車というと……高飛車部長の奥さま!!はっ、初めまして!第2事業部営業3課に配属になりました伊武ヶ崎です!本日こちらに入居させていただきました!荷物の整理が済み次第ご挨拶に伺うつもりでおりましたがおいでいただいて恐縮です!」
高飛車婦人「まずはあいさつ、荷物の整理などはそのあとというのが常識ざます。」
若者「……は?」
細い女性「ほんと一般常識を心得ないひとが多いですわねぇ」
太い女性「困ったものですわねぇ」
高飛車婦人「こちら井矢見(いやみ)課長と小判鮫課長の奥さまざます。」
太っている方が井矢見で細い方が小判鮫というらしい。形だけの笑顔で二人は会釈する。
「「どーも」」
若者「よろしくお願い…」
高飛車婦人「失礼するざます」
腰を折って挨拶している隙に三人の夫人が勝手に中に入っていく。
若者「まだ部屋の中が……!」
とつぜん見知らぬおばさんが入って来て伊武ヶ崎の若奥さんは困惑の表情を浮かべた。
女性「あの…」
高飛車婦人「まあなんて乱雑ざましょ」
若者「いえですから!」
止めに入ろうとする若者を無視してそこら中を練り歩き、ある一角で足を止めたと思うと叫ぶようにいった。
高飛車婦人「まあまあまあ!あの方角に淡いベージュのカーテンとはどういうことざます!赤地に緑の水玉模様にするべきざます!」
井矢見婦人「奥さまは風水の研究をなさってらっしゃるのよ」
若者「はぁ…」
そうしている間にもまた叫び声にも似た甲高い声が響いた。
高飛車婦人「こんなところにフランス人形が!!ドドメ色の仏像を置かないと病人が出るざます!」
~~
若者「というわけでインテリアをだいぶ交換する羽目に…」
マリア「それでわけの分からないものがいっぱいあるんですね。」
入って来た時から壁にはアジア地方のカラフルで謎の模様のタペストリーや仏像、金色の七福神の人形、謎の民族の彫像、果ては木魚(?)みたいなものまであったりする。景観というか、どれもこれもがいちいち目に痛い色で落ち着かない部屋なのだ。