ー日常ー街の住人達【5】

ー常春の国:エメラダ宮殿ー

そうか、そう考えればこの暗いようなフンづまりのようなもやもやした気分も理解できる。

今奴は灰色を氾濫させることで意味論的に我が国を貧乏にしようとしているとしたら……。

そうと分かれば反撃だ。しかしどこかで見張っているかもしれない。よし。

ミハイル「おいおい、仕事が不調じゃ困るぞ。僕も手伝ってやろう。」

ムーン1「ホントですかー」

ムーン2「お願いしますー」

仕事をするふりをして貧乏神を検索。森田検索……やってる場合じゃないな。

パソコンで検索をしてみると……

貧乏神の侵入を防ぐにはまず注連縄を張り、およそ四尺の作りかけの大草履を軒につるすべし、さらに箸に綿を巻き、唐辛子と一厘銭を結び付けたものを家から最も近い三差路に立てればよい効能あらたかなり。

意外にも貧乏神撃退のマニュアルがちゃんとあった。

こんなことならもっと早く調べればよかったと後悔するミハイル。なにしろ、もう入り込んでしまっているから役に立たない。

貧乏神の弱点は……天敵の福の神に出会うととたんに逃げ出す。ついでに貧乏神の好物は……焼き味噌?変なものが好きなんだな。

よし、これてだけ分かれば十分だ。

きっと、僕が暗記してる福の神のところへ電話しようとしたら妨害するに違いないから。

竹のヘラに味噌を塗って、たき火の周りに立てかける。

しばらくするといい具合に焼けてきて、貧乏神はこの匂いに抵抗しきれず、必ず現れる。

全ての作業を終えて角から様子を眺めていると……。

ミハイル「えっ」

ゼニアマール「ムシャムシャ」

焼き味噌を食っているのはゼニアマール氏。やはり貧乏神だったのか、というよりゼニアマールに貧乏神が取り憑いたと考えるべきか。とにかく敵が油断している!

宮殿内に逃げ込んで靴型携帯電話を脱いで番号をプッシュする。

ミハイル「××の××××の×××8番!もしもし!」

『はい、福の神協同組合です。』

ミハイル「えーと協同組合というとたくさんいるんですか。」

『はい、福の神とか服の神、副の神など』

ミハイル「なんでもいいから全員で来てください!よろしく!やったこれで貧乏神を追い出せる!僕の勝ちだ!」

瞬間、不気味な感覚に襲われ意識が飛びそうになった。

ゼニアマール(貧乏神)「人間のやることなどお見通しじゃ。いったん希望を持たせてから、さっき呼んだ兄弟分の絶望の神をとり憑かせたのじゃ。その方が効果的じゃからな。」

ミハイル「ううっ……?!」
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