ｰ池袋:駅前ｰ

マリア「これですか。となりに住んでいたオジイさんが引っ越すとき、荷物になるからとおいてったんです。私も邪魔ですけど捨てるのもなんですし。」

身なりの良い男「そうか、よろしいこれも人助けだ。私が買い取ってあげよう」

マリア「ええ!でもガラクタばかりですよ」

身なりの良い男「人助けといってるではないか、三万円、いや五万円でどうかね。」

マリア「ええっ、ガラクタに五万円!?」

身なりの良い男「そうだ!」

マリア「わかりました。ガラクタばかりとご承知の上でなら五万円で買っていただきましょう」

身なりの良い男「よし話は決まった!さあ、五万円」

差し出された五万円を受け取る。

マリア「たしかに」

身なりの良い男「では」

男は古伊万里の茶碗に手を伸ばすが、マリアはそれをさっと回収する。

マリア「おっと、私はガラクタをお売りすると申し上げたんです。これは本物の古伊万里ですからガラクタではありません。」

身なりの良い男「っ…」

マリア「さあこちらのガラクタをおもちなさい。まいどありー」

身なりの良い男「や、やられた～～!」

欲の皮のつっぱってる人間のいかに多いことか、そのあとも自称目利きが次々とおマリの罠にかかり犠牲者の数はひと晩でなんと10名。

マリア「五十万ゲットー!サトル君もきっと喜んでくれるわね。」


ｰアラファト家政婦協会ｰ

翌朝、元気に家政婦協会にやってきたおマリ。

おばさん「えっ、本当に50万円作ったの?!」

おばちゃん「どうやって!?」

マリア「ああやってこうやって」

おばさん「すごーい!」

おばちゃん「あくどいお金儲けをさせたらおマリちゃんはプロね!」

サトル「父親が帰ってきましたー!」

「「「えっ!」」」

サトル「外国にいってずっと行方不明だった父親が南米で石油を掘り当てて大金持ちになって帰ってきたんです!」

マリア「それはそれは……石油?」

サトル「母親は無事入院できたし家でしていた長女も戻ってきたしハッピーエンドでよかったー!」

おばさん「ハッピー?」

おばちゃん「エンドとは?」

サトル「皆さん見てないんですか!7チャンネルでやってた「愛は陽炎」!」

マリア「ドラマかい!」

サトル「そうですよ。もちろん。」

マリア「涙を流してたじゃない」

サトル「ぼくって感情移入しやすいんです。」

マリア「念のために聞くけど君の家庭は?」

サトル「いたって普通の家庭で両親も健在です。」

マリア「ハハッ、おのれを健在でなくしてやるー!」

サトル「きゃーー!」

マリア「こんな阿保だとは思わなかった!悪どい真似までして、稼いだこの50万をどうするんだー!」

おばちゃん「しかたないわよ。良かれと思ってやったんだからもらっちゃえばいいわ。」

マリア「しかし!……そうですかー?」

おばさん「なんだったのかしらねぇ、ホント……」

思いがけなく儲かったと喜んだのもつかの間、次の日の派遣先で

マリア「家政婦協会からきましたー」

身なりの良い男「あっ」

マリア「いっ」

さんざん怒鳴られて放りだされてしまいました。悪いことはできませんね。