ー日常ー街の住人達【4】

ー常春の国:エメラダー

ミハイル「ふむ……ホテルというのは儲かるものなのか?」

チコ「なんですか藪から棒に」

ミハイル「いいえ、壁から釘です」

チコ「はいはい、で?」

ミハイル「うむ、ルーマニアで無銘ホテルがミシュランで星を得たそうだ。だったらエメラダでもホテルを建てたらいいんじゃないかと思ったのだ」

チコ「素人の私が言うのもアレですけど、スタッフとかサービスとかが相当出来てないと無理じゃないですか?というか、私的にはホラーキャッスルの一件でもうしばらくホテルとかお城とかは遠慮したいです。」

ミハイル「うーむ、お前の気持ち云々はどうでもいいが、確かにまだ例の古城の元が取れていないしな。しばらくは本業(ダイヤ産業)で頑張るしかないか」


~~


深夜、宮殿の片隅でムーンが何かしています。

「よし、これであらかたセッティングは終わった」

実はこのムーンシマラッキョ号は昼間ダイヤの原石の仕分けをやっていました。

仕分けとは鉱山から送られてきた原石を10倍のルーペで見て大まかなグレードに分ける作業です。

掘りだされたばかりの原石は不透明な氷砂糖のような外見で素人には何の事やらわかりませんが、訓練された技術者はパッとみて「この石は色目がいい」とか「内包物が多すぎる」と分かるのです。

その時、シマラッキョ号が手にしていたのは百カラット以上あろうかという大粒の石。さすがのエメラダでもこんな立派な原石は滅多にとれません。

そのため慎重になりすぎて手元が狂い……。

カツーーン!

落下してしまった原石。慌てて作業台の下を確認するが。ダイヤの原石はまっぷたつ(※)になっていた。

※:ダイヤモンドは地球上でもっとも硬い物質ですが、天然の好物ですから劈開性(1方向からの力に対して面の状態で割れる物質)があり、ちょっとのショックでも割れることがあります。

ムーン「どうした?」

シマラッキョ「なっ!!なんでもない。ちょっとトイレ」

ムーン「ペーパーを使いすぎると殿下に怒られるぞ」

何食わぬ顔で外に出てきたはいいが……。

シマラッキョ「たいへんだー!大切な原石を割ってしまった!もしこんなことをトイレットペーパーの一回の使用量を30センチまでと法律で定めるような!ケチで吝嗇で守銭奴で赤西屋の殿下が聞いたらどんなことになるか!」


~イメージ図~

ミハイル『何を言ってる。僕だって鬼じゃない。お前の運命については四つの選択肢の中から選ばせてやろう。』

シマラッキョ『ほんとですか!』

ミハイル『銃殺とガス室と縛り首とギロチンとどれがいい?ああぁん?』

~~

シマラッキョ「いっそ国外に逃亡するか!二つに割れたとはいえ大粒の原石を持っているんダ!これを売れば一年や二年は逃げ回ることができるそのうち殿下が事件を忘れる可能性も……ハーー自分を誤魔化すのはやめよう殿下が忘れるわけがないし死ぬまで追跡されるのがオチだ。」
88/100ページ
スキ