ー日常ー街の住人達【4】

ー古城:監視ルームー

ミハイル「どうやってそんな特殊効果を演出したんだ!」

ムーン1「なにもやってませんてば」

ミハイル「え?」

ムーン2「ぎゃっ!」

狼男「グルルル」

悲鳴が聞こえた方に振り返ると狼男役の奴がムーンに襲い掛かっている。

ミハイル「おい、なにをやってる楽屋で芝居してもしかたないだろう!」

狼男「グルル」

チコ「ひっ!?」

こっちを向いた狼男はさっきまでの安い仮装ではなく本当に半獣の狼男になっていた。

「ぎゃーーー!」

さらに悲鳴は増え続ける。

フランケン「グッフッフッ」
ムーン3「ぐぇぇっ!」
ムーン4「ぎゃぁーー!」

二回りほど大きくなったフランケン役の男が片手にひとりずつムーンの首を掴んで持ち上げている。

ミハイル「アホかっ!芝居は観客の前でやれといっているのが分からんか!」

棒を掴んで殴りつけたがまるで効果がなく棒の方がへし折れてしまった。

狼男「ガオッーーー!」

「うわーー!」

チコ「で、殿下これじゃまるで本物です!」

ミハイル「なにかがおかしい!」

監視ルームから脱出しようとドアを開けると誰かが走ってきている……。

エンドレス「ああ殿下!」

ミハイル「エンドレス号か!ドラキュラ役はどうした!」

エンドレス「ガァー!」

すると突然エンドレス号はミハイルに噛みついた。

ミハイル「痛っ!」

エンドレス「ヒッヒッ」

振り解かれ壁に激突するはずだったエンドレス号はスーーっと壁に飲み込まれていく。

そして、壁の向こうから銃声がした。

ムーン1「ひぃっ!殿下壁からドラキュラが現れてやむえず発砲しましたが通用しません!」

逃げ出してきたムーン1号だったが一歩廊下に踏み出した足が沈んで底なし沼のように引きずり込まれていった。

チコ「ど、どうなっているんです!」

ミハイル「ええい、走れ。架空の設定が現実になって本物のホラーキャッスルになってしまった!とすると吸血鬼に噛まれたぼくも間もなく吸血鬼に……」

チコ「ええっ?!」

ミハイル「クソー!負けるもんか!僕の辞書に諦めという言葉はない!流星号で急いで宮殿に戻りマザーコンピューターに原因を解析させて対応策をねるのだ!」

チコ「はいー!」

外に飛び出るとそこは真っ暗で星が輝いているのに太陽が出ている空間だった。

ミハイル「えっ、ここはどこだー!」

チコ「で、殿下、下に地球が見えます!!」

ミハイル「流星号!降りて来い、ひょっとしてプログラムを……間違えてるーー!」

チコ「なにしてるんですか!!」

ミハイル「ああっこないだ入力ボードのテンキーを冗談半分でいろはキーに変えたから入力ミスしてしまったんだ!」

チコ「いや、ホントに何してるんですか……」

ミハイル「メモリーによると全速力つまり光速の95%で30分飛んだことになっている!すると飛行距離は!約7000万キロ!すると今いる場所は……火星!冗談じゃない流星号ただちに地球に帰るんだ!!」


~~


ー常春の国:エメラダ宮殿ー

チコ「結局何だっですか?」

ミハイル「ようするに僕が言ったようにわれわれは銀河はおろか銀河系の中のことすら本当には知っていない一番近い惑星である火星のことさえな。火星の持つ地場、地球でいえば地磁気に相当するものがおそらく地球とは決定的に違うのだ。実際にいってみて初めて分かったことだが、その磁場があまりにも異質なため、他の天体つまり地球からいった我々も建物も変容してしまったのだ。極めて異質な磁気影響で架空の存在が現実となり硬いはずの床が流動体になった。すべては火星という異世界の持つ不可思議な魔力の仕業だったともいえる。地球に帰ってきたらみんな元に戻っただろう。」

「「「はいぃ……」」」

ミハイル「しかしなんだな」

チコ「なんです」

ミハイル「火星にホラーキャッスルを作れば仕掛けも細工もいらないわけだ。」

チコ「それで?」

ミハイル「元手をかけずに大儲けできると思わんか?」

チコ「そんな物騒なお金儲けやめましょうよー!」
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