ー日常ー街の住人達【4】

ー常春の国:エメラダー

ミハイル「ヨーロッパのある国が古城を売りだしてるんだ。」

チコ「お城ですか?」

ミハイル「しかも格安の値段で」

チコ「ほんとだ。めちゃくちゃ安い」

ムーン1「安いのはいいですけどお城を買ってどうするんです?」

ミハイル「我が国はダイヤ産業のほかに観光事業にも力を入れている。」

チコ「はあ」

ミハイル「温暖な気候とのどかな風景それになにより王様がえらいから!」

マリア「……」

ミハイル「国民性はおだやかだ」

ムーン1「まあね」

ミハイル「なんだその返事は」

ムーン1「穏やかにしてないとえらい王様に酷い目にあわされることを国民は知ってますから」

ミハイル「ひっかかる言い方だな。まるで国民諸君が僕を恐れてるみたいじゃないか」

ムーン1「違いますか?」

ミハイル「僕はただ王室批判をした不心得者を年に数名火あぶりにしているだけで恐れられるようなことはしていない。」

ムーン1「主観の相違ですね。話の続きをどうぞ」

ミハイル「国民性が穏やかだから外国人観光客も安心して訪れられる。綺麗なホテルに澄んだ空気。なにより四方を海に囲まれているから美味しい海の幸には事欠かない。」

チコ「とパンフレットには書いてありますが」

ムーン1「我が国人民の大半は軍事かダイヤモンド産業に従事していますから、いわゆる第一次産業つまり農業や漁業で生計を立てているものはほとんどいません。」

チコ「穀物も海産物も全部外国からの輸入品じゃありませんか、沖合で外国の漁船から受け取ってエメラダ港に運び……」

~~

業者『さあ皆さんエメラダ湾で取れたての魚ですよー』

『おお、これは美味しそうだ』

『なにより新鮮なところが値打ちだねー』

~~

チコ「っとか言って観光客を騙してるんですよね」

ミハイル「こら口の聞き方に気をつけろ。この場合、騙してるというのは適切な表現ではない」

チコ「なんていうんです?」

ミハイル「生活の知恵だ」

チコ「ですかあ?」

ミハイル「だます方が利口で騙される方が馬鹿といってもいい」

ムーン1「身もふたもないですね」

ミハイル「あのなその程度のことはどこの観光地でもやってるんだ」

チコ「えー……」

ミハイル「山菜料理で有名な山奥のひなびた旅館に行ったら出された山菜が実は中国からの輸入品だった、なんてのはよくあることだ」

ムーン1「うーん、確かにありそうだから怖い」
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