ー日常ー街の住人達【4】

ー南麻生:冬木邸ー

マリア「……ちょっと失礼します。」

夏代「あのっ!急ぐんですけど!!」

マリア「タカシさんの携帯は……これです。」
プルル
『はい、もしもし』

マリア「突然のお電話で失礼します。実はわたくし新しい家政婦でして、ええおヨネさんの代わりの、つかぬ事をうかがいますが今日事故を起こされましたか?」

『はあっ?なんのことです?』

マリア「今どちらに?」

『会社ですよ。もちろん』

マリア「やっぱり。ありがとうござます。失礼しました。」

夏代「あの」

マリア「夏代さまのでられた電話はニセモノです。何者かが息子さんの名をかたったんです。」

夏代「でも振り込んでください!」

マリア「はい。……はいぃ?」

夏代「だって振り込まないと誰かがひどい目にあわされるんでしょう!?」

マリア「いや……その……」


~~


それからしばらくして、例の税理士さんが訪ねてきた。歳は夏代さんと同じぐらいだろうか、イイ歳のとり方をしたナイスミドルといったところだ。

三木野「税理士の三木野利平(みきのりへい)です。」

マリア「三木野さんでミッキーですか。奥さまは興奮されたためか熱が出ましてお薬を飲まれて休んでおります。」

三木野「「オレオレ詐欺」だね」

マリア「ええ、典型的な」

三木野「なっちゃん。いや、奥さんと10年前に亡くなったご亭主の克己君とは大学時代からの親友でね。」

マリア「なるほど、それでミッキーというあだ名で」

ミッキーの視線の先には写真立てが飾られていた。そこには若かりし頃の男女が三人でうつっている。

三木野「ありがとう君のおかげで被害をこうむらずに済んだよ」

マリア「いえいえ」

三木野「彼女はいい人というのか、悪く言えばポーッとしてるところがあって」

マリア「みたいですね」

三木野「おかげでちょくちょく悪徳商法なんかにひっかかるんだ」

マリア「ほほう」

三木野「克己君が残した証券類貴金属や自宅の権利書など大きな財産は私が管理しているから問題はないのだが、ただ彼女は年金暮らしだ。厚生年金や個人年金が月に30万ほど入る。」

マリア「持ち家でひとり暮らしなら充分ですね。」

三木野「うむ。おまけに生活は質素だから貯金も現金もそこそこ持っている。これがいけない。いくら税理士でも親戚でもない私がそういうお金まで管理はできない。それを狙ったかのように色んな奴が現れるんだ。」

マリア「といいますと?」
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