ー日常ー街の住人達

ー池袋:古美術フリーマーケットー

悠「ほほう、これはなかなか……」

京「いいものなのか?」

悠「おれは好きだな。この十二神将像」

京「十神将」

悠「いや、そっちじゃない。十二神将っていうのは仏教の信仰・造像の対象である天部の神々で、また護法善神のことだ」

京「ごほうぜんしん?」

悠「えーとな、仏法および仏教徒を守護する主に天部の神々(天)のことだ。護法神(ごほうしん)、あるいは諸天善神(しょてんぜんしん)なんてもいうな。」

京「……ん?」

悠「分からないなら仏像の亜種だと思ってたらいいよ」

京「うん、わからないけど、分かった。」

悠「はっはっ、正直だな」

京「それで悠はそれ買うのか?」

悠「いやー、二十三万は買えないなぁ」

京「高いなぁ」

悠「もうちょいお手頃なのなら買ってもいいんだけど……ん?あれは」

京「どしたの?」

悠「木彫り像だ。しかも、見てみろ今そこで掘ってる」

京「おー、アレって今さっきいってた奴じゃないのか?」

悠「あれは伐折羅だな」

京「ばさら?」

響「金剛力士といえばお嬢さんでも分かるんじゃないかな?」

悠「そうそう金剛力士だ。」

京「金剛は分かるぞ。おっきいヤツだな!」

悠「……んー、多分違う方の金剛を言ってるな」

響「では、もう少し分かりやすく言うと開口の阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像の2体を一対として、寺院の表門などに安置しているのを見たことないかね?」

京「それは知ってる。仁王像」

響「そう、一般には仁王(におう、二王)の名で親しまれているね。金剛力士は、あの像のことだよ。ほら、あそこのお嬢さんが持っている像を見て御覧。開口が阿吽の形をしているだろう?」

玲王「すいません、これ二つでいくらですか?」

「ひとつ千円だけど、セットで買ってくれるならで千五百円でいいよ」

玲王「それじゃあ、買います」

京「んっ?あっ玲王だ!」

玲王「えっ?あっ、臥劉さん。」

悠「知り合いか?」

京「クラスメイトだ。玲王はそういうの好きなのか?」

玲王「はい、仏閣等には少し興味があります。」

響「ほほぅ、随分と渋い趣味だね。そういえばキミも?」

悠「え、あー、おれはフィギュア的な意味で好きかな。こういうの並べてたらカッコいいっしょ?コレクター魂が燃えるって言うか」

響「あははは、それはなかなかユニークな考えだ」

悠「アンタはまんま好きそうな感じだな」

響「ええ、嫌いではないですね。」

玲王「それじゃあね。臥竜さん」

京「うん、バイバイ」

悠「もういいのか?」

京「うん、お待たせ。悠の方はいいのか?」

悠「あぁ。じゃあ、おれらは行くから」

響「えぇ、デート中に失礼したね。」

京「デートだったのか!!」

悠「……まぁ、好きなようにとってくれ」

響「青春だねぇ」

白嶺「あ、おじさん居た。」

響「あぁ、ヨミちゃん。」

白嶺「あぁ、じゃないよ。もー、勝手にウロウロするんだから」

響「ふふ、すまないすまない。ちょっと待ってくれ。今仏像を掘ってもらってる最中だから」

白嶺「……壺見に来たんじゃなかったの?」

響「フリーマーケットのだいご味はこういう衝動買いだよ」

白嶺「衝動買いで仏像を買うって……」
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