ー日常ー街の住人達【4】

ー双母同居邸ー

旦那母「ごちそうさま。美味しかったわ。昼食は子羊のローストにお三時はカボチャのタルトがいいわ」

嫁母「精進揚げに小朝堂の薄皮饅頭をお願い」

マリア「なんですと?!えーと、まず家中の掃除それから洗濯買い出し昼食のしたく……これを全部午前中に済ませて昼から夕食の準備。あっ、そのまえにおやつか、小朝堂ってどこにあるんだっけ……って、キャーー!!こんな忙しい家初めてだーーー!」

叫びながら始めたのはまずは、拭き掃除。階段を拭き始めたのですが、庭の手入れがあったことを思い出し、外に飛び出て刈り込みを始めたが、これは時間がかかる後回しとお風呂掃除に移り……かけたが、時間のかかる精進揚げの用意をしつつ、合間でカーテンの繕い!

トイレに行きたいけど言ってる暇がないと叫びながら買い出しに飛び出たのでした。

とうぜんながら掃除道具は出しっぱなし、風呂の水は出しっぱなし、精進揚げ用の鍋は火にかけっぱなし。

個人としての家政婦能力は高いマリアも初日からの難題にいつもより注意力が散漫になってしまっていた。

その結果……

妊婦「ふぅ、階段を下りるのも辛くなっ……キャッ!」
ドダダッ!

旦那母「なにごと!!」

旦那「うん?」


~~


マリア「ただいま帰りましたー」

旦那母「コラァ!!」

マリア「ひゃい?!」

旦那母「階段に雑巾を置きっぱなしにしたのはおまえかーーー!」

嫁母「おかげで娘が足を滑らせたのよ!たまたま忘れ物を取りに帰った婿殿が車で隣町の病院へ!!」

旦那母「救急車を呼ぶより早いからすぐに手当てをしてもらえるでしょうが!」

嫁母「身重の身体なのよ!もしものことがあったにどうするの!」

旦那母「馬鹿っ!」

マリア「お言葉を返すようですが!」

旦那母「返さんでいい!」

そのとき、足元に流れてくる水と焦げ臭いにおい。

「「えっ?」」

マリア「あっ……風呂場と台所」

「「きゃあああっーー!」」

風呂場に駆け込んだ旦那母はあふれ出続けている水を慌てて止め、台所に駆け込んだ嫁母は火柱をあげている鍋に慌てて消火器を吹きかけた。

嫁母「こんなドジで役に立たない家政婦は見たことないわ!!」

旦那母「ボケ!カス!ラッパ!」

このときマリアは泣くでもなく、謝罪するでもなく、どうにかして自己弁解をしなくてはと頭をフル回転させながら叫んだ。

マリア「返さなくてもいいといわれても言葉を返します!悪いのは私じゃない!」

旦那母「じゃあ誰よ!」

マリア「あなた方だ!」

嫁母「まっ!」

旦那母「言うにことかいて!」

マリア「私がドジを踏んだのは仕事が多すぎるからだ!それというのもあなた方二人が仕事を増やしているからだ!サルパ(※)だか血清豚コロリだか知らないが、一日三度食事ができる幸せを感謝することもなく、肉だ野菜だと勝手な注文をつけてあまつさえ自分たちじゃ片付けのひとつしないのに、指紋がどーのと偉そうに文句を言って!何より気が合わないだか何だか知らないが二人別々の生活を押し通そうとするその態度がすべての元凶!そのためプロの私でも目が回るような思いをさせられる!若奥さまは今まで本当によくやってきたが、アナタ方が態度を改めない限り疲労困憊していずれ必ず倒れることは明らか!お二人が協力して若奥さまの負担を軽くしてやらないとそのうち絶対病気になってしまいます!」

※:「サルパ」解散浮遊動物の総称。それがどうしたといわれても困るが。

「「!!」」

マリア「それでもこのまま、我儘を通しますか!どうです!」

「「て……」」

ジリリリ!

マリア「もしもし誰だこのクソ忙しいときに!えっ、産まれた?」

旦那『ショックによる早産だ!体重は少ない蛾母子ともに健康だ!!』


~~

そして、病院にて……

嫁「ふふっ、女の子ですよ」

赤ちゃん「すぅすぅ」

嫁母「まあかわいい!女の子ですって!?」

旦那母「あなたにとってもあたしにとっても初孫よ」

嫁母「……孫のためにこれから少しは」

旦那母「仲良くしましょうか」

旦那「おっ、おおっ!!」

マリア「な、なんとかいいくるめたぁ~……」

おかげでたくさんボーナスをもらったそうです。
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