ー日常ー街の住人達【4】

ー双母同居邸ー

翌朝……

旦那母「なんでしょう今日は息子たちの居間で朝食なんて」

嫁母「……」

旦那母「朝から不快なものを」

嫁母「部屋に帰って目を塩水で洗わなくては」

マリア「まま、まーま、まーまー。」

「「なんですあなた?」」

マリア「本来ならきのうのうちにお目通りすべきでしたが新しい家政婦でございます」

旦那母「ああ息子が言っていた」

マリア「おマリと申しますがなにぶん未熟者。ご立派で頼りがいのあるハンサムな旦那様のご期待に添えますかどうか」

旦那母「あら」

マリア「また実にお美しくて立ち居振る舞いが優美なおかつ働き者の若奥さまにくらべると」

嫁母「あら」

マリア「ドジでのろまな亀同様の私でございますので。例えは一階の台所で朝食を作り、二階のお部屋に運ばせていただくあいだに料理が冷たくなってしまいます。それどころかこの広いお屋敷の中で迷ったら、朝食をお届けするのがお昼ごろになる可能性も。というわけで慣れますまでの間この旦那様たちのお部屋の台所を使って料理を作りこちらで召し上がっていただくことをお許し願いたいです。」
ペラペラ、ペラペラ

旦那母「まさか迷うほど広い家でもないけど」

嫁母「そういうことなら」

マリア「ありがとうございます。では、朝食のご説明に移らせていただきます。奥さまにご用意させていただいたのはハワイ名物のロコモコ、ライスのうえにハンバーグを乗せグレービーソースをかけた上に目玉焼きを乗せました。」

旦那母「……」

マリア「また奥さまにご用意いたしましたのは、アサツキを水にさらしくさみを取ったものを叩き、別に味噌を丸めて焼き網で焼いたものにみりんを加えて混ぜ合わせ、ご飯に乗せました。お茶をかけてお茶づけ風にお召し上がりください。」

嫁母「おい」
旦那母「しい」

マリア「ありがとうございます。」

嫁母「それにしても朝から肉や卵とは、おマリとやらシェルパを知っていますか?」

マリア「シェルパ?ああ、登山の時に持つ運びなんかをする。」

嫁母「シェルパ族は高地民族で食事は大変質素ですが肉類や乳製品などを大量に摂取する欧米の登山家よりはるかに体力があります。それというのも植物性の食物を多くとるからです。血液が綺麗になり血中の酸素量が増えるからほんとうの体力がつくのですよ。」

旦那母「ふん、おマリ。血清アルブミンを知っていますか」

マリア「けっせいっえっ?」

旦那母「栄養状態が悪くなると体内の血清アルブミン血が下がり老化が進みます。老化を遅らせるには、この値を下げないこと、つまり肉類や油脂類を充分にとることが大切なのです。近代栄養学の常識ですよ」

嫁母「……」

旦那母「……」

マリア「(うわぁ……)」
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