ー日常ー街の住人達【4】

ー双母同居邸ー

マリア「待ってください。そうすると普段の食事はどうなさったんです」

眼鏡の旦那「だから妻が毎日二通りの献立を考えて作ってたわけさ。」

妊婦「コクッ」

マリア「一年三百六十五日、毎日坂食別々の献立を……コックさんなんかは雇われなかったんですか?」

眼鏡の旦那「親の食事は嫁が用意するべきだと、そのへんは60近い母達の共通の意見なんだ。」

マリア「大変なところだけ共通してるなぁ」

眼鏡の旦那「しかし妻のお腹も大きくなってきて買い物にも不自由するようになってきたので、一時的にお手伝いさんを頼むことをやっとの思いで認めてもらったのだ。」

マリア「なるほど」

眼鏡の旦那「しかしやってもらう仕事は料理だけでなくて、妻がやっていた掃除洗濯などいろいろな家事も同時にこなしてもらわなくてはならないといってコックと家政婦二人雇うのは贅沢すぎると……」

マリア「お母さま方がおシャッタので料理の得意な家政婦ということに」

眼鏡の旦那「なったわけだ。大変だが働いてもらえるだろうか」

マリア「そりゃもうお仕事ですから」

眼鏡の旦那「あぁ、ありがとう助かるよ」

妊婦「よろしくお願いします」

眼鏡の旦那「こまごまとしたことは妻に聞いてくれ、とにかく肝心なのは母達の機嫌を損ねないことだ。よろしく頼む」

マリア「わかりました。」

妊婦「それでは、ご案内します。こっちがキッチンでバスルーム。とくにガラスや鏡の類は指紋一つ残っていても大ごとになりますから気をつけて」

この家は大きく分けて五つの部屋に分かれていた。右下は応接室、その上に江戸っ子の私室トイレ付き、左下に台所バストイレ収納スペース部屋、その上に関西人の私室、二つの間を取って一番上に若夫婦の寝室今台所ユニットバス。

詰み木でいうなら左右に二つのブロックを置いてその二つをの上にもう一個ブロックを置いている感じ。

マリア「ああ、なるほど変わった形の建物の構造になっている理由が分かりました。」

妊婦「母達があまり顔を合わせなくても済むようになっています。」

マリア「てってーしてますね。では、お食事は?」

妊婦「よほどのことがない限りそれぞれ自分のお部屋で」

マリア「わざわざ運ぶわけですか」

妊婦「もちろん」

マリア「……(こりゃあ大変だわ。掃除だけでも相当大変そうなのに別々に料理を作って別々に運ぶなんて時間と体力のエライ無駄だわ。私のやり方でやらせてもらうしかない)」
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