ー日常ー街の住人達【4】

ー双母同居邸ー

眼鏡の旦那「とにかくそりがあわないのはわかっていたが共同生活を始めれば互いに歩み寄って仲良くなってくれるんじゃないか……と期待していたのだが……」

マリア「だが」

眼鏡の旦那「これが全然歩み寄らないんだ」

マリア「はぁ(なんかやっかいなところに来ちゃったな)」

眼鏡の旦那「歩み寄らない原因ははっきりしている。二人とも同年代で自分の生活パターンが確立しているから、今更それを変えようとは思わないんだ。」

マリア「……」

眼鏡の旦那「つまり相手が自分に合わせるべきであって、自分から近づいていこうなんて考えはサラサラないわけさ」

マリア「はいはい」

眼鏡の旦那「共通の趣味でもあればいいんだが、困ったことに好きな物がことごとく正反対と来てる。」

マリア「ほう」

眼鏡の旦那「たとえば音楽なら、うちの母親はロックが好きで、あちらは古典(クラシック)が好き、うちがバラエティーが好きなら、あちらはニュース番組」

マリア「間を取ってアニメを見せたらどうです」

眼鏡の旦那「何処をどう間を取るとアニメになるんだ。」

マリア「ダメですかねぇ」

眼鏡の旦那「ひいきの野球チームやテレビ番組の問題だけなら私たちもこんなに苦労しなかっただろう。」

マリア「まぁ、テレビを二つ置けばいいだけだったり、時間帯をずらすだけで済みますからね。」

眼鏡の旦那「二人の対立が決定的なものになったのは、実は食生活の違いなんだ。」

マリア「ははあ、それは大きいでしょうね。関東と関西じゃだいぶ違いますから。」

眼鏡の旦那「そうなんだ」

~~

旦那母『麺類といったらお蕎麦でしょう。醤油味がキリリと決まったお蕎麦。』

嫁母『お出汁の効いたうどんに決まってるでしょう』

~~

眼鏡の旦那「という初歩的なところから始まって」

マリア「それが初歩ですか」

眼鏡の旦那「納豆論争からお好み焼き論争」

マリア「納豆は何となく想像がつきますがお好み焼き論争とは?」

眼鏡の旦那「お好み焼きともんじゃではどちらがより文化的な食べ物かという……」

マリア「よりによって結論の出そうにない論争をやってますね。」

眼鏡の旦那「好きな食材から調理法まで兎に角見事といいたくなるほど正反対でね。」

妊婦嫁「うちの母は実家がお寺さんだったこともあって精進料理が好きなんです。お魚は少し食べますが塩焼きか、あっさりした煮つけに限り、肉類は一切口にしません。」

眼鏡の旦那「かたやうちの母は味の濃い肉料理が大好物。焼肉ステーキが一か月続いてもOkという人で」

マリア「両極端だなあ」
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