ー日常ー街の住人達【4】

ー池袋:アラファト家政婦協会ー

マリア「まかないができましたー」

家政婦A「きたきた」

家政婦B「まってました」

お熊「おマリちゃんお料理上手だものね。今日は何?」

マリア「木の芽田楽モドキ丼」

お熊「モドキ丼?」

マリア「本当は木の芽をすり鉢で当たって味噌に混ぜるんですがこの時期木の芽は手に入りませんので粉山椒を味噌に混ぜて豆腐に塗り、焼いてからきざみのりと一緒にご飯に乗せてみました」

家政婦A「それでモドキ丼なのね」

おばちゃん「でもおいしいわ」

マリア「なにしろまかないの予算は一人50円ですから、なんなりと工夫しませんと」

ジリリリリ
お熊「はい、もしもし。……はい、わかりました。検番からよお料理の得意な人ですって」


~~


マリア「おかしいといえばおかしな注文ね。料理がポイントなら家政婦でなく本職のコックを雇えばいいのに……えーと、ここね。」

指定された職場は「U」の字を逆さにしたようなおかしな形の家だった。

眼鏡の旦那「君が家政婦協会の……おマリさんというのかよろしく。こっちは妻だ」

お腹の大きい妻「ぺこっ」

マリア「ずいぶん立派な体格ですね。とくにおなかのあたり」

眼鏡の旦那「妊娠九か月」

マリア「やっぱり、だろうなとは思ったんですが、依然太った女性を妊婦さんと間違えて、えらい恥をかいたことがありまして、これがホントの妊婦が八」

眼鏡の旦那「…………」

マリア「つまり二四が八とひっかけて」

眼鏡の旦那「無理なシャレは胎教に悪いからやめてくれ。」

妊婦の妻「面白い方」

眼鏡の旦那「これならなんとかつとまるかな……」

マリア「なんとか?」

眼鏡の旦那「事情を説明しておこう、この家に住んでいるのは私たち夫婦と双方の母親がひとりずつ。2年ほど前、それぞれの父親が事故と病気で相次いでなくなり母達にひとり暮らしをさせておくのも心配なので家をリフォームしてひきとり、同居生活を始めたわけなのだが」

マリア「リフォーム同居ですか」

眼鏡の旦那「この母親同士の仲が悪くてね。」

マリア「(あちゃー)」

眼鏡の旦那「なにしろうちの母親はチャキチャキの江戸っ子。妻の実家は大阪であちらはバリバリの関西人。そもそも結婚前に両方の親を引き合わせた時からぎくしゃくしてたんだ。」

マリア「というと?」

眼鏡の旦那「話の途中どういうわけか野球の話題になって」

~~

旦那母「野球といったら巨人でしょ」

妻母「阪神タイガース!」

~~

マリア「どうしてそういう席で野球の話なんか振るんです」

眼鏡の旦那「別に振ったわけじゃない……」
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