ー日常ー街の住人達【4】

ー常春の国:エメラダ宮殿ー

チコ「風邪とかではないんですか?」

コーラス号「……」
フルフル

ムーン1「ならどうして……」

ミハイル「コーラス号は妖怪に取り憑かれたようだな」

ムーン1「妖怪!?」

ミハイル「妖怪ぎっくり声だ」

チコ「ぎっくりごえ!?」

ムーン1「なんですそりゃ!」

ミハイル「ギックリ声は人間の美しい歌声が大好物で歌うたびに少しずつ声を盗んでいくのだ。コーラス号もだんだん声が出にくくなったんじゃないか。」

コーラス号「は……い」

ミハイル「少しずつ声を盗まれたからだ。(ほんとはガスのせいだがな)このままだと完全に声を取られて歌うどころじゃなくなるぞ」

ムーン1「コーラス号はどうしたらいいんです!」

ミハイル「歌うたびにというのがミスだ。よーするに歌わなければいいんだ。一年くらい歌わなければ妖怪も諦めて離れるだろう。」

ムーン10「一年!?」

ムーン11「一年もコーラス号の歌が聞けないんですか!」

ムーン1「いや!それより一年歌えないとなったらコーラス号自身が!」

コーラス号「……んな!……んな!……歌は……くの命です!」

ミハイル「アホ、一生歌えなくなってもいいのか!」

コーラス号「ッ!!」
ダッ!

ムーン10「コーラス号!!」

ミハイル「ほっとけ、理屈の分からん奴だ。」

チコ「はい、はい、そうなんです。ええ。」

ムーン1「チコちゃん、このさなかに何を?」

チコ「私の先輩の知り合いに妖怪の専門家が居るのでちょっと連絡を繋いでもらってギックリ声の事を調べようと思って」

ミハイル「(ふん、そんな妖怪がいるものか)」

チコ「はい、わかりました。」

ミハイル「わかったんかい!!」

チコ「妖怪ギックリ声、美しい歌声をコレクションするのが好きな珍しい妖怪で美声の持ち主から少しずつ声を盗んで、最後にギックリと声を出せなくするのでこう呼ばれているそうです。」

ミハイル「(ええっ!?どういうことだ!妖怪なんて僕が適当にでっち上げた与太話のはずなのにそうじゃなかったのか!もしかしたら……操られていたのか?ギックリ声に操られてガスを発生させ妖怪がそれを利用して声を盗んでいたのだとしたら……恐るべしギックリ声!!)」

チコ「ああっ!」

ミハイル「今度は何だ!」

チコ「コーラス号さんが!!」

チコの指さす先ではコーラス号が窓から外へと身投げしようとしていた。
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