ー日常ー街の住人達【4】

ー都内某所ー

アラファト家政婦派出協会所属、夢前マリアが新しい仕事先に向かっています。

健康のため実は電車賃を浮かすため都内ならどこへでも歩いていきます。

マリア「ほっといてちょーだい。そもそも江戸時代の人は皆一日平均2万歩歩いたそうな。これは現代でいうと一流の営業マンの運動量に匹敵する。つまり江戸時代の人間はみんな一流の営業マンだったのよ。ハッハッハッ」

つまらないことを知っているわりに肝心なところでわけの分からないマリアです。

さて、今回マリアが派遣されたのは『グランハイツロイヤル世田谷一番館』という名前の割にエレベーターもない古マンション。

こんなところに家政婦を雇おうなんてお金持ちが住んでいるのかという疑問を、いやいやこういう所にこそ大金持ちが隠れ住んでるのかもしれないという、妄想を抱きながらマリアは雇い主である「永吉小百合」という人の部屋の前までやってきた。

チャイムを押すと、ビービーと安っぽいブザーの音がする。

しかし、何度押しても反応がない。買い物にでも出てるのかと、その場を離れようとしたとき……。

「誰?」

マリア「永吉様で?家政婦協会のものです。」

「入って!」

そう言うが早いか、腕を掴まれると部屋の中に引きずり込まれるマリア。

永吉小百合と思われる女性は20代後半ぐらいでどうみてもお金持ちには見えなかった。

マリア「初めましておマリと申します。小百合さまとお呼びしてよろしいですか?」

挨拶をしながらマリアは辺りを確認する。

フェラガモやセリーヌの靴。部屋の奥にはエルメスやヴィトンのバック。コートに旅行時計は一流ブランドばかり。見た目とは裏腹にお金持ちらしい。

小百合「なんとでも」

マリア「まずなにをいたしましょう。お茶でも入れのましょうか?」

小百合「ダメよ。ガスを止められてるから。」

マリア「……ぱーどぅん?」

小百合「ガスを止められてるの。ついでに電気も止められたからローソクで暮らしてるのよ。なぜか水道だけは使えるんだけど」

マリア「水は生命(いのち)にかかわりますから水道局もめったに止めたりしません。」

小百合「あっそう。」

マリア「失礼ですがお金に困ってらっしゃる?」

小百合「大困りよ」

マリア「その貴女がどうして家政婦を雇おうなんて大胆不敵なことを考えたんです。だいたい家政婦に何をやらせよーちゅーんです。ああん?」

ピリリリ!

小百合「きゃあぁぁぁっ!」

マリア「?!」

小百合「それよ!電話番よ!あなたの日当ぐらい何とかするから対応して!お願い!」

マリア「携帯に出てもよろしいのですか?」

小百合「キャーキャー!」

マリア「電話恐怖症?もしもし?」

『借りた金は返さんかボケェェ!』

マリア「?!!」

『元利合わせて40万じゃ!払えんなんぞ抜かすと生まれてきたのを後悔させたる!明後日までじゃ、わすれるな!!』

ブッ、ツーツー

マリア「な、なな……」

その後も……

『返済期限は分かってるんだろうな!』
『利息は二百%じゃ!東京湾に沈むのは貴様が初めてじゃねーぞ!』
『目玉でも腎臓でも売って金を作れ!一つあれば用は足りるわ!!』

っと、何本もの催促電話を相手にさせられました。
37/100ページ
スキ