ー日常ー街の住人達【4】

ー国営アパート:管理人室ー

衛生係「血の固まり具合からみて死亡したのは、およそ2時間前でしょうか」

ムーン1「とすると彼が発見する直前に死亡したわけか」

衛生係「どうやら鎖骨も折れてるようですね。」

ムーン1「死体をどうします?警察に内緒で処分したら、まずいんじゃありませんか?」

ミハイル「大丈夫だ」

チコ「なぜです?」

ミハイル「ぼくがわが国で一番の権力者だからだ」

チコ「うわぉ…」

ミハイル「問題は動機だな。管理人は何かトラブルをかかえてなかったか?」

ムーン1「トラブルといいますか」

ミハイル「なんだ集金係」

ムーン1「管理人としては有能な老人でしたが、家賃の取り立てが厳しくて滞納がちな店子とは揉めることもあったようです」

ミハイル「よく揉めてたのは?」

ムーン1「僕が聞いた話では…4号室の店子ですね。プロレスラーあがりで今はクラブの用心棒をやってます。酒好きで給料を全部飲んでしまうので家賃が遅れがちだったらしいです。」

チコ「殿下、そいつが犯人じゃないですか?」

ミハイル「ん?」

チコ「揉めてるうちにカッとなってラリアットをかましたんですよ!だから床で後頭部を強打したんです!鎖骨が折れたのもそのせいです!」

ミハイル「理屈は通っている。しかし……」

チコ「しかし?」

ミハイル「面白くない」

チコ「はぁ?!」

ミハイル「そんな単純な事件じゃつまらんじゃないか、もっと面白味のあるストーリーでないと」

チコ「ストーリーって……」

ミハイル「窓の側に倒れてたわけだから」

窓を開けるとミハイルは下を覗き込んだ。

チコ「何か見えますか?」

ミハイル「アレは……血じゃないか?」

チコ「え?」

よくよく見ていると確かに血のようなものが落ちている。

ムーン1「どういうことです?」

ミハイル「3階…いや4階かな、ここの真上の4階の住人は?」

ムーン1「はあ……ええと、年金暮らしの足の悪い老人です。小柄でとてもラリアットなんかできそうにありませんよ」

ミハイル「いってみよう」


~~


チコ「ここが、その老人の部屋ですね。」

ミハイル「失礼する」

チコ「えっ、ノックもしないで……」

老人「なんですアナタ方は」

ミハイル「探せ、重いものとロープだ」

ムーン1「は?」

チコ「はぁ……」

老人「ちょ、ちょっと何をなさるんです!」

ミハイル「家宅捜索だ」

老人「令状はあるんですか!」

ミハイル「僕が国王だと知らないのか、僕の顔が令状だっ!!」
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