ー日常ー街の住人達【4】

ー東京世田谷:高級住宅街ー

ばあや「それじゃあ、奥様に紹介しましょ」

マリア「では、実践モードに」

ばあや「実践モード?」

マリア「使いこまれたエプロンとほっかむり、100均のヘアゴムで髪を束ねて……経験ゆたかな家政婦のイメージ」

ばあや「無駄に苦労してるようにしか見えないけど」

マリア「ハッハッハ、またまたぁ」

ばあや「まぁいいわ、奥様。新しい家政婦です。」

奥さま「新しい下働きなんかどうでもいいわ!それよりもこれはなんなの!!」

ばあや「はあ?」

奥さま「主人あてのクレジットカードの請求書よ!カラティブティックで80万円手なによこれ!」

ばあや「あたくしに言われましても。」

ピンポーン!

マリア「誰か来ましたね」

ばあや「噂をすれば……」

奥さま「主人だわ!すぐに呼んできて!」

ばあや「ああまた修羅場が……」

マリア「修羅場?」

ばあや「あんたも悪いときに来たね」

マリア「ちょくちょくこーゆーことが?」

ばあや「製薬会社の社長やってるだんな様は婿養子でね。一昨年なくなった大旦那様に見込まれて養子になるくらいだから腕は確かなんだけど英雄色を好むというか女出入りが激しくて常に愛人が2.3人いるという強者でね」

マリア「それじゃ奥様も面白くないですね。」

ばあや「普通の女でもたいがい面白くないのに、うちの奥さまと来たら隣の家の焼きもちで首でも吊ろうかってくらいの極め付きのやきもちで、おかげでしょっちゅうゴタゴタしてるんだわ」

マリア「(やっかいな家に来たなぁ)」

旦那「どうしたばあや血相を変えて、おや、そっちのひとは?」

マリア「新しい家政婦です。おマリとお呼びください」

旦那「おマリ?」

ばあや「だんな様80万円の請求書が」

旦那「なっ!?うちに届いただと?!会社に回せといってあるのに!ああまた奥さんがぁァ!」

マリア「(いざとなるとだらしないタイプか)」

ばあや「はぁ……」

マリア「ばあやさん、針金とビーズがあります?」

ばあや「ええ」

旦那「あああー!」

マリア「小箱に赤い包装紙、金色のマーカーに綺麗なリボンなんかもあるとグーです」

ばあや「何に使うか知らないけどあるわよ」

旦那「ああああーーー!」

マリア「じゃあ、ちょっとお願いします。あと、バタバタうるさいので旦那様、おだまりくださいまし。」
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