ー日常ー街の住人達【4】

ー東京世田谷:高級住宅街ー

ピンポーン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポーン!

「はあや!チャイムが鳴っているじゃないの聞こえないの!」

ばあや「ふぁーい。まったく落ち着いてトイレにも入ってられないのかね、この家は……はいはい?あら?おかしいわね……」
ガチャ……

マリア「お邪魔しています」

ばあや「ぎゃっ!なんですあなた!」

マリア「アラファト家政婦派出協会からきましたこれが身分証明書」

ばあや「ああ、ひとり頼んでおいたんだけど……ずいぶん若いのね。」

マリア「人手不足のおりでして」

ばあや「まあなんでもいいけどさ、えーと夢前マリア18歳……18歳?!どうみても15.6ぐらいなんだけど」

マリア「はい、本当は間違いなく15の美少女でして実は……」

ばあや「まあ、呉服屋を営んでいたお父さんがバブル期に不動産に手を出して失敗。」

マリア「100憶という莫大な借金を残して去年他界しまして」

ばあや「100憶とは豪気だわね」

マリア「それで娘の私が返済することになったわけですが、なにしろ15ですから働きたくてもどこも雇ってくれません。たまたま派出協会の会長さんと知り合いで相談したら同情して使ってくれることになりまして、ちゃんとニセの身分証明書まで用意してくれましたからとてもいい人です」

ばあや「そーゆーのはいい人っていうのか?」

マリア「別の人にも同じことを言われましたけど。おかげさまで毎月10万円ずつ返済しています」

ばあや「ちょ、とお待ちなさい。100億の借金10万ずつ返して、いったい何年かかるの?」

マリア「およそ一万五千年」

ズデッ!
ばあや「なぁっ?!」

マリア「皆同じ反応しますねぇ。冗談みたいな話ですけど少しずつでも返済している間は不良債権しなくて済むと銀行サイドにいわれたんです。」

ばあや「日本経済歪んでるわねぇ。まあいいわ、事情も事情だし働いてもらいましょ」

マリア「ありがとうございます。」

ばあや「家政婦としての能力をテストします。まず料理」

マリア「お任せください」
トントントントン

ばあや「掃除」

マリア「はーい」
ササッササッササッササッ

ばあや「お客様の取り次ぎ、電話の対応、庭の草むしり、犬の散歩、買い出し、帳簿つけ、爆発物の除去作業」

てきぱき、てきぱき

マリア「いかがでしょうか?」

ばあや「歳の割にやるじゃないの。とくに信管(※)処理が上手いわ」

※:爆弾をさく裂させるための装置を除去する作業。

マリア「生きるために必死ですから」
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