ー日常ー街の住人達【4】

ーロンドン:路地裏ー

長身の男「開けてみろ」

大柄の男「はっ」
ガチャガチャ

若い男「大事そうに抱えていたからきっと中身は金目のものだ」

長身の男「それにしてもネオンぼっちゃま」

ネオン「坊ちゃまはよせといってるだろう。」

長身の男「ロンドンの暗黒街を牛耳るクラスター一族の四男坊に生まれながら、こんなケチな盗みを働かなくちゃならないなんて……おいたわしい」

ネオン「仕方ないよ。年の離れた3人の兄さんたちとは母親が違うんだから」

~~

長男『いいかネオン、お前は死んだ親父がキャバレーのダンサーに産ませたしょーもない子供だ。』

次男『本来なら由緒あるクラスターの屋敷で生活できる身分じゃない』

三男『しかし、つまらん生まれではあるが俺たちの弟であることは確かだ。我々も鬼じゃないから追い出したりはしない』

長男『その代わり働け!一生懸命屋敷の仕事をやるなら置いといてやる。家政婦がわりに働くんだ!』

ネオン『はい』

長男『それじゃあ俺達はパーティにいってくるからな』

ネオン『あの、今月の生活費がまだ……』

長男『生意気なことを言うな!そのくらい自分で工面せんか!馬鹿たれが!!』

~~

長身の男「おかげでこうして自分で稼がなくてはいけない……まるでシンデレラだ!」

大柄の男「お気の毒に、ううっ」

ネオン「だからー、あまり同情しないでほしいなー。仕方ないよ、ボクはまだ子供で兄さんたちにはとても逆らえない。でも、もう少し大人になったらその時は……」

大柄の男「ぼっちゃま……」

長身の男「ケースはあいたのか?」

大柄の男「あっ、はい、ただいま……って、ありゃなんだこりゃ?」

長身の男「刃物?金気のものではあるが金目のものじゃなさそうだな」

ネオン「やれやれ。三つに分かれていてこう組み立てるのかな?」
かちゃかちゃ

長身の男「槍?矛とでもいうべきでしょうか?」

ネオン「こんなものでも売ればいくらかには……」

何の気なしに軽く矛を振るったネオン。その先に積まれていた鉄筋の束がすべて真っ二つに裂けた。

「「「えええっ?!」」」



ー常春の国:エメラダ宮殿ー

ミハイル「矛が盗まれたぁーーー?!エメラダに置いといちゃ危険だと思うからロンドン大使館の金庫に入れようと思ったのにバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカすーーーーっ、馬鹿!」

ムーン11『しゅ、しゅいませーん』

ミハイル「どなってる場合じゃない、なんとかして取り返さなくては!盾を持ってこい!」

ムーン13「もってこい?」

ミハイル「そうだもってこい!」

ムーン13「ああ、日向ぼっこにはもってこいの日よりだ」

ゴッ!ドゴッ!バキッ!グシャ!ドゴーーーン!

ミハイル「僕はマジで焦ってるんだ!!」

チコ「なんの騒ぎですか?」

ムーン1「矛が盗まれたらしい」

チコ「矛?」

ムーン1「そう。矛盾の「矛」」

チコ「高価な矛なんですか?」

ミハイル「馬鹿者。本物の「矛盾の矛」だ!」
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