ー日常ー街の住人達【3】

ーとある山中:天狗の隠れ家-

揺光【それで伏魔。妾を呼んだのは何用じゃ?】

天魔「お前に貸していたアレを返してくれい」

揺光【あれ?はて……何ぞ借りておったか?】

天魔「天狗蓑を貸しておいたろう」

揺光【天狗蓑…………。】

天魔「おいおい、忘れたのか?」

揺光【いや、返したぞ】

天魔「嘘をつけ。ワシは返してもらっとらんぞ」

揺光【いいや、返した。そして返した後どうなったかも覚えとる】

天魔「なんじゃ、どうなったかとは?」

揺光【言っていいのか】

天魔「うむ」

揺光【あの日、妾が顔を出したら宴会を始めて、お前が調子に乗って風で炎を操ってたら蓑に引火して消し炭にしたろ】

天魔「……」

大天狗「はい、私も覚えています。」

天魔「…………」

揺光【というか、何十年前の話をしとるんじゃ】

天魔「ま、まぁ、それはさておいて……」

大天狗「天魔さま、天狗の隠れ蓑を使って何をするおつもりだったんです?」

天魔「まぁ、それも置いといて」

揺光【言え。ここまで妾に無駄足を踏ませたんじゃぞ】

天魔「暇なんじゃ」

揺光【……は?】

天魔「こうやって山に籠っていても暇じやからな、隠れ蓑を使って街に出てみようかと思ったんじゃ」

大天狗「なんてことを……はぁ」

揺光【隠れ蓑なんぞ使わんでも普通に出てくればよいじゃろ】

天魔「そうなのか?」

揺光【いや、そうなのかって……逆に聞くが街で何がしたい】

天魔「菓子を食いたい!!」

揺光【見た目通り女童じゃな】

天魔「誰が幼女か!くーるびゅーてぃじゃろが!」

揺光【大天狗が言うならともかく、お前はどう頑張って女童じゃ】

天魔「そんなすたいりっしゅ痴女みたいな格好しとる奴がくーるびゅーてぃなわけないじゃろ!」

大天狗「誰が痴女ですか」

揺光【妾がいうのもなんじゃが主の露出は相当じゃぞ】

大天狗「っ……」

天魔「ほーれ」

大天狗「言っときますが、この天狗装束を決めたのは天魔さまですが?」

天魔「あははは」

大天狗「はぁ…」

揺光【もう帰っていいか?】

大天狗「お手数をおかけしました」

天魔「待て待て、帰るな帰らせるな!」

揺光【なんじゃ】

天魔「揺光、今日は泊まっていけ」

揺光【遠慮する。今日は稲荷寿司ときつねうどんを食べる予定なんじゃ】

天魔「そのくらい用意してやる。大天狗が」

大天狗「だと思いました…」

揺光【んー……じやあ、逆にせい】

天魔「逆?」

揺光【お前が妾に着いてこい。悠の家に泊めてやる】

天魔「……つまり街に連れていってくれるのか!」

揺光【そうなるの】

大天狗「揺光さま、やめてください。天魔さまを連れだすなんて何が起こるかわかりません」

揺光【……それもそうじゃな】

天魔「諦めるのが早い!」
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