ｰ池袋:摩天楼ｰ

凍夜「あーあー、雨雨雨かぁ」

詠子「社長」

凍夜「ん、なに?」

詠子「雨男ですか?」

凍夜「え、いや……そんなことはないはずだけど?」

詠子「そうですか、社長がぼやいてる時は雨なので」

凍夜「雨だからぼやいちゃうんだよ」

詠子「雨はお嫌いですか?」

凍夜「嫌いってこともないけど……まあ、晴れてる方が好きかなって感じ」

詠子「なるほど」

凍夜「ヨミちゃんは?」

詠子「同じですね。嫌いではないですけど晴れてる方がいい」

凍夜「ああ、お揃いだね。」

詠子「ハハッ」

凍夜「ぴっくりするぐらいの愛想笑い…」

詠子「ぴっくりってなんですか…」

凍夜「ちょっとかわいさを出してみたけどどう?」

詠子「可愛いですよ。三葉虫と同じくらい」

凍夜「ああ、それ下から数えた方が早い系だね」

詠子「私は結構好きですよ。三葉虫」

凍夜「ヨミちゃんて面白いよね」

詠子「好意的な意味で受け取っておきます」

凍夜「あ、うん。好意的な意味でいったから」

詠子「しかし……今日は一段と暇ですね」

凍夜「そうだね。お客さんも来ない、集金もない。早じまいしようか?」

詠子「書類仕事はいくらでもありますよ」

凍夜「あはは……」

詠子「ただ」

凍夜「ただ?」

詠子「小腹空きませんか?」

凍夜「言われてみれば」

詠子「何か出前でも頼みますか?」

凍夜「じゃあ、ピザかな」

詠子「いいですね。何ピザにします?」

凍夜「そうだなぁ。ヨミちゃんのお勧めは?」

詠子「そうですね。このチョコマシュマロパイナップルピザとかどうですか?」

凍夜「わ、わぁお……美味しいの?」

詠子「いえ、食べたことないです。」

凍夜「それを勧めてくるヨミちゃんが素敵だわ…」

詠子「こういうのがメニューに大きく載ってるってことは美味しいんじゃないですか?」

凍夜「だとしても、これでMサイズって相当ハードだよね。」

詠子「普通のピザだったらMでも平気な場合ありますけど、これでMは酷でしょうね…。いきますか?」

凍夜「勘弁してほしいかな」

詠子「若さを前面に押し出している社長ならありかと思ったんですけど」

凍夜「俺より若いヨミちゃんは?」

詠子「あ、私はミックスピザでいいです」

凍夜「俺もそっちがいいよぉ!」

詠子「冗談ですよ。ただ、せっかくなので別々にしましょうよ。シェアできますから」

凍夜「そうだね。じゃあ、俺は……あねこのイベリコ豚の生ハムアスパラピザにしよう」

詠子「……」

凍夜「どうかした?」

詠子「いや、普通ですね」

凍夜「ヨミちゃんが、時々俺に求めてるものがわからない…」