ー日常ー街の住人達【2】

ー池袋:摩天楼ー

凍夜「すっかり春だねぇ」

詠子「ですね。」

凍夜「夜でも温かいよねぇ」

詠子「ですね。」

凍夜「こんな日はさぁ…」

詠子「駄目です」

凍夜「あはは。まだ何も言ってないんだけど」

詠子「駄目です」

凍夜「あはは……。」

こんこん!こんこん!

詠子「?」

凍夜「はいはい?あいてますよー?」

初老の男「はぁはぁ、旦那!」

凍夜「あれ、どうしたの?こんな時間に……」

初老の男「た、助けてくれ。俺達のねぐらがガキどもに……」

凍夜「えぇ……あー、えーと」

詠子「緊急事態のようですのでどうぞ」

凍夜「わかった。行こうか」

初老の男「ああ、早く来てくれ!」



ー池袋界隈:裏路地ー

凍夜「ちょっとちょっと、なんでおっちゃんがバテてるの?」

初老の男「はぁはぁ、だ、旦那こっちはいいから……」

凍夜「はいはい、この先だったよね。おーい!」

ホームレスA「うぅっ…」

ホームレスB「あっ…アンタ……」

凍夜「……どうやら少し遅かったみたいだね。なにがあったの?」

ホームレスA「い、いきなりガキどもが数人現れて……」

ホームレスB「蹴られるわ殴られるわ……。おまけにロケット花火を撃ちこんできやがったんだ……」

凍夜「性質が悪いねぇ…」

初老の男「クソッ…」

凍夜「とりあえず、動ける?怪我は?」

ホームレスA「あちこち痛ぇけど……骨とかは無事みたいだ」

凍夜「そう、なら不幸中の幸いだね」

ホームレスB「全然幸いじゃねーよ!畜生!」

初老の男「旦那に噛みついても仕方ねーだろ!」

ホームレスB「畜生……」

ホームレスA「金貸しの旦那すまねぇな。こいつも俺もここのねぐらを潰されると行くあてがねーんだ。それでイラついちまってて……助けに来てくれたのにすまねぇな。」

凍夜「いや、それはいいんだけどね。……とりあえず、今夜はここに居ないほうがいい。これで、どこかで汗でも流して泊まって」
スッ

初老の男「だ、旦那そんなことは……」

凍夜「いいから、ね。」

ホームレスA「すまねぇ、本当にすまねぇ……うぅっ」

凍夜「泣かないでよ。それよりも……それは預かっておくよ」

ホームレスB「は?」

凍夜「包丁。さっきちらっと見えたんだよね。何考えてか知らないけどそれを使うのはよくないから、ね?」

ホームレスB「ほ、ほっといてくれ!俺は、俺はもう今更失うものなんてねーんだよ」

凍夜「失うものがないなら、なおさら前に進むしかないってことじゃん。このことは俺ももう少し動いてみるからさ。」

ホームレスB「……」

初老の男「旦那に任せよう」

ホームレスB「……ふん」
カラン…

凍夜「んっ、それじゃ、これは捨てておくから」

ホームレスA「旦那……恩にきります」

凍夜「はいはい。……さて、確かこの路地は防犯カメラの刺客になって映らないんだけど…あっちのコンビニの駐車場のカメラなら撮れてるかもしれないな」
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