ー日常ー街の住人達【2】

ー池袋:魔天楼ー

後楽「金貸してくんない?」

凍夜「いきなりかつストレートだなぁ」

後楽「印鑑はちゃんと持ってきたぞ」

凍夜「……ちょっとその印鑑見せてもらえますか?」

後楽「いいぞ」

凍夜「どうも……。これ、小鳥遊って書いてありますね。」

後楽「ああ、借りてきた」

凍夜「黙ってですか?」

後楽「もちろん」

凍夜「どうぞ。バレ無いうちに返しておいてください。」

後楽「ダメかぁー」

凍夜「堂々と他人名義で借りようとしないでくださいね。」

後楽「んー、仕方ない。じゃあ、兄ちゃんじゃなくて。窈の兄さんの借金に上乗せして貸してくれないかな。」

凍夜「おかえりください」

後楽「ちょー。仕方ない。またくるよ。」
ガチャ
トッ…
詠子「あっ…」

後楽「おっと、悪いね。」

詠子「いえ、こちらこそ」

凍夜「やぁ、詠ちゃん。」

詠子「こんにちは。今のお客さん……ではないっぽいですね。」

凍夜「お客と言えばお客だったんだけど……。まぁ、お帰りいただいたよ」

詠子「懸命ですね。」

凍夜「踏み倒しますって顔に書いてあったしね。」

詠子「まぁ、それより社長……約束のチョコです」

凍夜「え!?ホントに!?ありがとう。開けていい?」

詠子「どうぞ」

凍夜「…………」

【針供養豆腐チョコトッピング】

詠子「ちゃんと普通のもありますよ?」

凍夜「ああ、良かった。本気で嫌われてるのかと一瞬自分の行いを振り返っちゃったよ」

詠子「それはちゃんと振り返ってください」

凍夜「えっ?」

詠子「これは飾っておきますね。社長のデスクに」

凍夜「えぇ……確かにオブジェっぽいけど、そのうちカビにまみれた何かになりそうなんだけど」

詠子「ちゃんと防腐加工してあるので平気ですよ」

凍夜「えぇー……どゆこと」

詠子「作っているうちに社長に似合いそうな感じになってきたので頑張りました。」

凍夜「俺って豆腐に針が刺さってチョコがかけられたものが似合うの?!」

詠子「……」

凍夜「……」

詠子「まぁ、それはともかく、チョコどうぞ」

凍夜「う、うん。あ、美味しそうなトリュフチョコだ。これって本命ってことでいいのかな?」

詠子「そういうこというから針供養チョコを渡されるんですよ?」

凍夜「いやいや、ちゃんと聞いておかないと大事なことだし」

詠子「本命といったらどうするんです?」

凍夜「そうだなぁ。夜景のきれいなホテルで食事とか」

詠子「……」

凍夜「どうかな?」

詠子「あ、スイマセン。空気清浄機止めてきたか考えてて話し聞いてませんでした」

凍夜「あははは。なんかさびしい…」

詠子「そういう時はチョコレート食べて仕事頑張りましょう」

凍夜「はーい…」
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