ー日常ー街の住人達【2】

ー池袋:魔天楼ー

拳二「クリスマスだなぁ」

凍夜「ですねぇ。ところで瓦谷さん」

拳二「あ?」

凍夜「暇なんですか?」

拳二「暇だなぁ。っても、暇な方がいいぜ。年末にきな臭いのや血なまぐさいのはお断りだ」

凍夜「そりゃそうですね。」

拳二「お前さんこそ暇そうだな」

凍夜「暇は暇ですね。っても、ウチみたいなところが繁盛してても困るんですけどねぇ」

拳二「互いに難儀な商売だよな」

凍夜「ははっ、全くですね。」

拳二「ただよぉ」

凍夜「はい?」

拳二「そこに転がってる箱の中に詰まったポケットティッシュは配らなきゃいけないもんじゃねーのか?」

凍夜「気のせいですよ」

拳二「ガッツリみえてっけどな」

凍夜「よかったら。好きなだけ持って行ってくれていいですよ。」

拳二「いらねぇよ。」

凍夜「事務所のほうで配ったりとか」

拳二「何が悲しくてヤクザが金貸しの宣伝しなくちゃならない」

凍夜「でも、ポケットティッシュっていざというとき便利ですよ?」

拳二「そりゃありゃ便利なときはあるだろうけど。一個持ってたらいいだろ」

凍夜「二つ三つあるほうが……」

拳二「いつまで食い下がってきてんだよ。ってか、その様子だと配らなきゃいけねーんだろ、コレ」

凍夜「はははっ、そうなんですけどねぇ。こう寒いとなかなか……ね?」

拳二「いや、しらねーけど」

凍夜「それにティッシュで受け取ってもらえないんですよねぇ。」

拳二「それは何となくわかる。若い女でも無視されてるもんな」

凍夜「ほんとに冷たいですよねぇ。」

拳二「すぅ……ふーーっ。それこそ従業員のねぇちゃんにやって貰えばいいだろ。そういうのだって立派な仕事だ。サンタっぽい衣装でも着せたら別の店の宣伝かとおもって貰ってく奴がいるだろ。」

凍夜「これ以上、なにか押しつけたら出て行かれそうで……」

拳二「お前が社長出来てんのが不思議でたまらねぇな」

凍夜「これでも結構優秀なんですよ。オレ」

拳二「普通、自分で言うか?」

凍夜「あっはは。そういえあと数日でクリスマスですね」

拳二「そして正月……一年がはえぇわ。ふーーっ。」

凍夜「瓦谷さんはクリスマスとか正月どう過ごしているんです?やっぱり豪遊ですか。」

拳二「いんや、普通だよ。けど、なぜか毎年悠と過ごしてるな」

凍夜「へぇ、彼の家でパーティとか?」

拳二「ふーーっ。ちげぇよ。普通に飲み屋とかで華やかなのはねーな。」

凍夜「んん?どうゆうことです?」

拳二「なんて説明したらいいかな。クリスマスをクリスマスらしくなく、正月を正月らしくなく過ごしてる」

凍夜「……それ、楽しいですか?」

拳二「俺ぁとしては独りで過ごすよか悠と酒かっくらってるのは幾分ももマシだ」

凍夜「でも、今年は娘さんがいらっしゃるでしょ?」

拳二「娘じゃねぇよ!居候だ!」

凍夜「あれ、母親が不明の娘だって噂で聞いたんですけどね」

拳二「池袋の噂何ぞ、儲け話ぐらい当てになんねーんだよ」
40/100ページ
スキ