ｰ百目鬼相撲道場ｰ

雲水「……」

魁人「……」

伊万里「……」

雲水「…………」

伊万里「えっ?」

雲水「ん?」

伊万里「今のって何があったのかを話してくれる流れじゃないんですか?」

雲水｢聞きたいのか｣

伊万里「聞きたいですよ!?曲がりなりにも敵対している相手のことなんだし」

魁人「九頭竜師なり、神姫お嬢さんに聞くなりしたらいいじゃないか」

伊万里「道玄先生はその話題を話したがらない。」

魁人「だから、神姫お嬢さん……」

伊万里「お前さっきから、お嬢さんを気安く呼んでんじゃねーぞ!!」

魁人「めんどくさい奴…」

雲水「……」

ブァチィィィィン!

魁人「!?」

伊万里「!?」

雲水「がははっ。ビックリしたか?」

魁人「……っ、今の指パッチンで出せる音じゃないですよ」

伊万里「水道管でも破裂したかと思った……」

雲水「がははっ。聞きてぇんなら話してやるよ。別に秘密にしてるわけでもねぇしな。その前にまず聞くが……単純に一番強い生物はなんだと思う?」

伊万里「は?」

雲水「一番強い生き物だよ」

伊万里「一番強い……九頭竜師か百目鬼師?」

魁人「小鳥遊弥一」

雲水「おう、姫川。その通りだ。」

伊万里「弥一ってその人はもう死んでんですよね?」

雲水「だが、それでも「ただ強い」の一点においては奴が頂点に立っている。死んでるっていう事実を抜きにしたら今でもその頂で君臨し続けている。」

伊万里「話だけっていうか、噂は幾度となく耳にしてますけど……」

雲水「そんじゃあ、その弥一の事を踏まえて、十神将の役割はなんだ?」

伊万里「役割は……」

魁人「小鳥遊弥一が暴挙を起こしたときに春、夏、秋、冬、龍、鬼、狸、猿、馬、鳥の十家で止める同盟」

伊万里「分かってるよ!」

雲水「そうだ……。だが、小鳥遊弥一が死んで十神将の役はなし崩し的に解かれた。もちろん最初は弥一が死んだということを信じられず、また何かの陰謀の可能性もありしばらくの間は現状維持が続いていた。」

伊万里「話しを中断させて悪いんですが……弥一の死因はなんだったんすか?」

雲水「老衰」

魁人「老衰って……。」

雲水「ちなみにそれだけしか分かってねぇし、オレらは死体も遺骨もみちゃいない」

伊万里「それは……本当に死んでるか疑うなぁ」

雲水「そうなんだよ。それでまぁ様子見期間にオレらはバラバラに散った。それは解散て意味の方じゃなくて第二の弥一になる者がいないかの調査だ。小鳥遊の血筋は危険視対象だったからな、だが弥一の息子、同世代の親戚筋からはそういうタイプは一切発見されなかった。ただ、気になったのは孫の世代だ。小鳥遊梔、柏、そして小鳥遊悠。この三人は一応注意してたんだがな。問題がないとされた」

伊万里「小鳥遊悠は問題があると思う。いいや、問題があるな。」

魁人「護衛対象に文句付けるのは三流以下ですよ」

伊万里「ぐっ……」

雲水「まぁ、それでボッボッと十神将の解散が決まりつつあるなか……問題が起きた。それの中心となったのが九頭竜天だ。」