ー日常ー街の住人達【2】

ー百目鬼相撲道場ー

寅「もともとは……アンタの弟子?」

雲水「おうよ。元はうちにいた奴だ。ただし、力士としてじゃなく、喧嘩屋として鬼状態を習いに来てたな」

寅「お前ら知ってたのか?」

雷太郎「初耳だ」

風太郎「初耳だ」

雲水「オレがとった弟子の中では古株だからな」

寅「なら俺らより年上か」

雲水「ほんの少しな。弟子歴は古株でも歳では最年少だった」

寅「ほう……そ相当な腕なんだろうな」

雲水「いや、全然」

寅「は?」

雲水「アイツはダメだ。全然。鬼状態になったら90%負けると断言できる」

雷太郎「どういう」

風太郎「ことです?」

雲水「鬼状態の根源は怒気じゃなくて冷徹だ。ただただ怒りに飲まれるヤツには使いこなせん。」

寅「鬼状態はブチ切れる技術だろ」

雲水「違う違う、鬼ってのは怒ると負ける。何処までも冷徹に敵を壊し、命を淡々と擦り減らす覚悟があることが真の鬼の姿。暴れるだけなら大振りになって動きが単調になる。それに加えて命を消費していくんだ、ほっとけば勝手に潰れるぜ?」

寅「……じゃあ、なんでそんなポンコツを差し向けた?」

雲水「この話には続きがある。鬼としてはダメだったが……アイツの怒りの振り幅は目を見張るものがあった。格闘の才もな。だから怒りに直結するヤツに預けた」

寅「怒りに直結?」

道玄「怒。怒りとは怒気。怒気を自ら操作できれば氣として循環できる」

寅「まさか……」

道玄「うむ、儂が弟子として受け取った。中々偏屈な奴だったが十分使い物になるレベルまでにはなった。特に赤龍と橙龍、二龍の相性がよく、その二門に特化している。」

雷太郎「へぇ、でもそんな話も初耳」

風太郎「ですよ。教えてくれても」

雷太郎&風太郎「「良かったのに」」

寅「めんどくさかったんだろ」

雲水「がはははっ。正解だ!」

道玄「儂はお前がとっくに話しているものだと思っていたんだがな」

雲水「がはははっ。まぁまぁ、オレらの共同弟子のひとりだイイじゃねぇか」

寅「っで……俺の暇つぶしにもそいつをあてがってくれるんだよな?」

雷太郎「俺「ら」な」

風太郎「俺「ら」な」

道玄「いいや。違う」

寅「あ?」

道玄「アイツはしばらく大江戸学園に潜ってもらう。そんな暇はない。お前らの相手は儂の元弟子が相手する」

雷太郎「元?」

道玄「今の話しの逆のパターンと思えばいい」

風太郎「逆?」

寅「……龍に見込みがなかったが鬼には見込まれた奴ってことか?」

道玄「そうだ。」

雲水「がははっ。そろそろ来るはずなんだがな、そこそこ忙しいヤツだ。とりあえず顔合わせだけ考えといてくれや」

寅「なんでもいいが……アンタらはそうやって弟子交換とかしまくってるのか?」

道玄「する時もあるが……大抵は諦めて消えていく奴がほとんどだ。」

雲水「オレらだけでなく、他の十二神に移らせることも多い、合わないことをやらせるより合うところに送るほうがいいだろう。無理して底上げするより長所を伸ばすってことだ。がははは」
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