ー奇談ー學校へ行こう10

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「雨と風でブリザード!」

千世子「ブリザードではないのだ」

サタン「我が本物のブリザードを起こしてやるのだ!」

摩耶「起こせるの?」

サタン「……多分!」

悠「色々とやめろー!」

千世子「はい、じゃあ、以前の授業の続きなのだ。妖怪化した蝦蟇は、巨大に成長することがあるのだ。ある伝説では、男性が山中で大岩に腰かけて釣りをしていたら、仲間が突然「帰ろう」という合図を送って逃げていったのだ。追いついてどうしたのかと尋ねると、男の座っていた岩が大あくびをして、その目が火のように赤く光ったので恐ろしかったからだ、というのだ。後日その場所に言ってみたのだが、そこには岩など何もなかったのだ。この話は、恐らくその岩は大鎌だったのだろう、というところで終わっているのだ。」

スキュラ「巨大な生き物というのは恐ろしいですよね。」

神姫「鈍重ならいくらでも対処できるけどね」

スキュラ「しかし、昆虫などの小さな生き物が巨大化したら恐らく機敏ですよ」

悠「なんの話してるんすか」

神姫「巨大生物の話」

千世子「京都の比叡山にも似たような伝承があり、岩に腰を下ろしてタバコを吸っていたら、その岩が実は大鎌で、突然動き出したというのだ。」

悠「蝦蟇に乗ってたら何か溶けそうだよな」

摩耶「モンゴリアンデスワーム」

悠「ででで、でーた!モンゴリアンデスワーム!」

亘理『悠ちゃん好きだね……デスワーム』

ベヒモス「ボクの装甲は毒も通さないモス」

千世子「人間に化ける蝦蟇もいるのだ。ある話では、若者が止まっている山小屋に美しい娘が訪ねてきて、止めてくれというのだ。しかし夜になると寝ている人間の血を吸い始めたので、斧で打つとその女は消えてしまったのだ。翌日血の跡を追っていくと、巣の中で蝦蟇が死んでいたというのだ。別の話ではカエル好きの俳句の先生のところに、美女に化けたカエルが毎夜現れ、最後にはとり殺した、というものもあるのだ。更には、戦国時代の原因となった大戦争「応仁の乱」で総大将を務めた細川勝元という大名の正体が蝦蟇だったという伝承まで語られていたのだ。」

神姫「鱗で無くて装甲扱いでいいのね」

スキュラ「そもそもあの装甲取り外しできますからね」

摩耶「マジで?」

ベヒモス「当然モス。お風呂にはいるときとはちゃんと脱ぐモス。」

悠「鎧というか服?」

千世子「しかし変化ガエルの妖怪は悪いものばかりではなく、人間と交渉するものもいるのだ。ある屋敷で沼を埋めることになったのだが、夜になると上品な着物を着た老人が現れ、自分はこの沼に住む蝦蟇であり、沼を埋めるのはやめてくれないかと頼んできたのだ。よく見ると着物の模様に見えたのは蝦蟇の背中の斑だったというのだ。」

ベヒモス「そういっても過言ではないモス。」

神姫「なら、別に浸透剄でなくてもパージしたらいいんじゃない?」

ベヒモス「尻尾の装甲は外れないモス」

神姫「……不便なのね。」

ベヒモス「慣れてるモス。」

千世子「吸えるの妖怪は日本だけでなく世界中にあり、そのバリエーションの数も多いのだ。日本のカエル妖怪の祖になったの多のは、中国のヒキガエルに関する言い伝えなのだ。中国の宗教「道教」の書『抱朴子(ほうぼくし)』には「ヒキガエルが1000年生きると頭に角が生え腹には赤い塊ができる。これは肉芝といって、食べれば仙人になれる」と書いてあるのだ。更に個の肉芝を利用利用すれば、雨や霧を起こしたり、身体を縛られても抜け出せたりと色々な術を身につけられるというのだ。」

悠「そういう意味ではサタンは別段普通だよな。」

サタン「魔王に向かって普通とは何なのだ!」
ゴゴゴッ!

悠「オーラを放つな、オーラを」

摩耶「でも立派な角あるし」

サタン「……これ、冠なのだ」 
スッ

摩耶「……なんかごめんね。」

千世子「この説はかなり長く信じられていたようで、後年の薬学書にも『ヒキガエルは山の精をよく食べるので、これを食べれば仙人になれる』と書かれていたのだ。以上、蝦蟇のじゅぎょーだったのだ。」
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