ー奇談ー學校へ行こう10

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「んー……小腹がすいた」

サタン「ラム肉食べたいのだ」

摩耶「羊?」

サタン「ラム肉と赤ワインが最高なのだ。」

悠「おいおい、酒のみのおっさんだな」

サタン「誰がおっさんなのだ!」
ドゴォ!!

【キムナイヌ】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。北海道を中心に移住する先住民族で、今もその文化を継承し続けている「アイヌ」。彼らアイヌが伝える神話伝承の一つに登場する妖怪がキムナイヌなのだ。」

悠「ま、まてい、吹っ飛んだおれを放置するな……」
ズルズル

ベヒモス「ゾンビみたいモス」

摩耶「ゾンビ並みにしぶといよ」

悠「噛みついてやろうか……」

ベヒモス「尻尾は噛まないでモス!」
ブォン!

千世子「キムナイヌは「山のひと』という意味で、その名の通り山に住むのだ。伝承によって特徴に差があるが、多くは怪力の大男でたばこを好むほか、禿げ頭であることが多く、そのためこの妖怪をロンコロオヤシ(ハゲ頭を持つお化け)、オケン(つるっぱげ)などと呼ぶ伝承もあるのだ。来ムンセタという名前の山犬を連れていることもあるのだ。キムナイヌは血を恐れるともいわれ、アイヌの間では血を怖がる人間を、キムナイヌのようだといってからかうこともあったというのだ。」

亘理『一番硬そうなのに』

悠「おれはあの尻尾に齧りつく勇気はないな」

摩耶「フルスイングの一撃を受け止める勇気はある、と」

悠「ねぇよ」

神姫「現代にしてTレックスの尾みたいな一撃を堪能できるわよ?」

千世子「妖怪は人間に悪さを働くものが多いが、キムナイヌは人間を手伝うこともあるというのだ。山の中で重い荷物を運んでいるときなど「守り神さんたち、手伝っておくれ」というと、キムナイヌがあらわれて荷物を軽くしてくれるのだというのだ。」

悠「堪能したくないです」

摩耶「ベヒモスちゃんは物理特化、サタンちゃんは特殊物理特化、じゃあ、スキュラさんは?」

スキュラ「一応、水の魔法は使えますよ」

神姫「やっぱり魔法タイプなのね」

スキュラ「……はい」

千世子「一説では、この妖怪の正体は「山の神が零落した姿」だとされるのだ。妖怪が誕生した経緯のひとつ「それまで崇められていた民間信仰神が、仏教などほかの宗教が流入するなどして進行がすたれた結果、妖怪となった」というものがあり、キムナイヌもそのようにして、妖怪になったというのだ。」

悠「今、間があったぞ」

スキュラ「……魔法も使えますが触手で叩きつけたりする方が得意です」

亘理『超物理』

摩耶「まぁ、水で攻撃するより、三つ首の犬で噛みついたり触手でとらえて水の中に引きづり込む方がねぇ」

スキュラ「あ、でも、毒も使えますよ」

千世子「役に立つことがある一方で、人間を殺してしまうような恐ろしいキムナイヌの話も多くあり、いつでも人間に友好的というわけではないのだ。」

神姫「毒を吐くの?」

スキュラ「いえ、吸盤の中に仕込まれている爪に猛毒が出るんです」

悠「物理だよな。」

亘理『物理だ』

スキュラ「……魔法も使えますから」

千世子「キムナイヌはハゲ頭を気にしており、荷物を軽くしてもらう時にうっかりハゲ頭の事を口にすると、激怒して山を荒らしてしまうのだ。更には急に雨が降りだしたり、何処からともなく木片が飛んできたり、大木が倒れてきたりと不可思議なことまで起こすのだ。もしこうなってしまったら「山のお父さん、お前さんの上に、木が倒れていくよ」といえば、キムナイヌは退散するのだ。」

サタン「我は魔法とかは使わなくてもなんでも吹き飛ばせるぞ!」

悠「知ってる」

ベヒモス「頑張れば地震とか起こせますモス」

神姫「何気にこの子、凶悪ね」

悠「神姫さんの親父さんもどっこいどっこいです。」

千世子「ほかにも、キムナイヌはタバコ好きのため、山でタバコを吸うと現れるというのだ。タバコの葉を少し摘まんで「山の神さんにあげます」といえば害を受けることはないが、あげないと何処までも追ってきて殺すという、血なまぐさい伝承もあるのだ。以上、キムナイヌのじゅぎょーだったのだ。」
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