ー奇談ー學校へ行こう10

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「最近映画で星の王子さまのなんかCMやってるよな」

摩耶「やってるね」

悠「おれ、星の王子さまっていうとニューヨークに行くしか思い浮かばない」

亘理『どゆこと?!』

神姫「星の王子さまニューヨークに行くって映画知らない?」

千世子「あ、知ってるのだ」

悠「マジか!?」

【マナス】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。中国の西、ロシアの南。中央アジアと呼ばれる地域に、キルギスという小さな国があるのだ。だが小さいといって侮ってはいけない。子の国には、世界中の英雄物語の中で最も長いといわれている物語「マナス」が、伝わっているのだ。マナスとは、この物語の主役であり、キルギスの国民に愛される英雄の名前なのだ。」

悠「いやぁ、ぴよこが知ってたのが驚きだ」

摩耶「結構古い映画だよね」

悠「おれの好きな映画の一つだ」

亘理『コマンドーは?』

悠「好き」

千世子「マナスはイスラム教の神「アッラー」が、子供のいない夫婦に授けた子供だったのだ。神の力で生み出されたマナスは幼いころから神童ぶりを発揮し、」何と若干7歳にして兵士として戦場に立っているのだ。マナスはこの頃から無類の強さを発揮し、15歳の時にはキルギスのリーダーとなるのだ。火縄銃「アクケルテ」と剣『アチャルバルス』を携えたマナスは、軍隊を連れて各地を遠征し、いくつもの多民族や異教徒を倒してキルギスの領土を広げていったのだ。」

神姫「私は映画ならビッドファーザーとかが好きね」

悠「ああ、デニーロ、カッコいいもんな」

摩耶「若いころのデニーロはカッコいいよね」

悠「外人でならジョニー・デップが好きだ」

亘理『パイレーツカリビアンの人だね』

千世子「マナスは神の子にふさわしい武勇を備えていたが、性格の方は神の子とは思えないくらい粗暴で、ひとを殴る、神聖な枯れ木を切り倒す、僧侶の杖をひったくるなどやりたい放題だったのだ。年齢を重ねるとともに粗暴な性格は改まっていったが、短気な性格だけは変わらず、周囲を困らせることも多かったのだ。」

亘理『摩耶君はどんな映画が好き?』

摩耶「しわ」

亘理『へ?』

摩耶「「しわ」はマイナーかな「最高の人生の見つけ方」とか「カルテット人生のオペラハウス」とか「最強の二人」」

悠「なにその涙腺崩壊ちょいす」

千世子「戦いの中で、マナスは壮絶な最期を向かえるのだ。マナスは敵の待ち伏せを受け、毒の塗られた斧を頭部に叩き込まれてしまったのだ。マナスは斧が刺さったまま視力を振り絞って国に帰ったが、その傷がもとで命を落としてしまったのだ。」

摩耶「将来のためにね。」

神姫「最高の人生の見つけ方と最強の二人は私も好きだわ」

摩耶「あとは酔拳」

悠「それは摩耶っぽい」

亘理『分かる』

千世子「世界最長の叙事詩「マナス」は、全八巻、2000ノン文字で書かれた大作なのだ。同じく世界有数の長編英雄物語として知られるインドの「マハーバーラタ」を上回り、ギリシャの「イリアス」と「オデュッセイア」と比べれば10倍以上の分量だというから、その長さには驚くばかりなのだ。」

悠「なんか映画みたくなってきたな」

亘理『確かに』

神姫「今みたい映画とかあるの?」

悠「……あ、霊幻道士5ベビーキョンー対空飛ぶドラキュラ」

亘理『どんなチョイス?!』

悠「多分、あの映画は千回は見てる気がする。冗談抜きで」

亘理『えー……』

千世子「なぜマナス物語がこれほどまでに長いかというと、それは「マナス」の主人公がひとりではないからなのだ。実は「マナス」は、初代主人公の「マナス」を先祖とする一族の、8代にわたる活躍を描いた物語なのだ。日本では「マナス」を主人公とする冒頭部分のみが翻訳されているが、それでも全三巻の大作なのだ。以上、マナスのじゅぎょーだったのだ。」
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