ー奇談ー學校へ行こう10

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「最近は漫画が豊富で困る。」

亘理『悠ちゃんて単行本派なんだよね?』

悠「まぁ、極々たまに立ち読みもするがほぼ単行本を買うな」

亘理『置き場なくない?』

悠「そのために本棚を増設していくのも楽しい」

神姫「ちょっとした病気っていうのよそれ。」

悠「え?」

【ロージャ・シャーンドル】

千世子「はい、じゅぎょーしますのだ。19世紀中盤、フランスでナポレオンが失脚してヨーロッパが混乱のさなかにあった頃。東ヨーロッパにあるハンガリーという国では、土地や家畜の不足、貧富の差の拡大によって、民衆の国に対する不満が高まっていたのだ。」

悠「いやいや、まだ病気じゃないよ。」

摩耶「ちょっと自覚はあるんだ」

悠「コレクター魂が、燃えるほどヒートなんだよ」

モノリス【⦅にほんごとしておかしいです⦆】

悠「うるさいよ。」

千世子「こういった国には無法者が現れると相場が決まっており、ハンガリーも例外でではなかったのだ。「ベチャール」と呼ばれた彼らは、一言でいえば「武装して権力に逆らう義賊」なのだ。このベチャールの中からは、のちに英雄と呼ばれる大人物まで現れたのだ。」

花子『この板なに?』

雨「でっかい辞書よ」

悠「山田さんまた来てたのか」

花子『誰が山田花子だ!!』

悠「奈緒子だと思ってたんならちょっと怒る」

千世子「ロージャ、シャーンドルはベチャールのひとりなのだ。ハンガリーでは日本と同じように名前を「性・名」の順で書く習慣があるため、英語式に生を後に書く表記では「シャーンドル・ロージャ」となるのだ。ロージャは役人や領主などから家畜を盗んで生活しており、その利益を民衆に分け与えていたため、「ベチャールの王様」とも呼ばれる民衆のヒーローだったのだ。馬泥棒と射撃の技術に優れ、常に二丁の拳銃を持ち歩いていたというのだ。」

花子『誰だ!』

摩耶「トリックの主人公」

悠「最近、ゲオでtrick母之泉編腸完全版ってのを見つけて借りたんだけど」

摩耶「超?」

悠「腸」

花子『なんで腸…』

千世子「現在でも残るロージャの肖像画を見ると、鋭い目線と豊かな髭に強い印象を感じるのだ。数多いベチャールの中でロージャが特に「国民的英雄」とみなされている理由は、ロージャが義勇兵を率いてハンガリー独立戦争を戦ったからだといわれているのだ。」

摩耶「母の泉編ってトリック無印の第一話だよね。」

悠「そうそう。アレでさ、山田は昔から冗談を言ったり笑ったりするのが苦手っていう話しだったんだけど……」

摩耶「……冗談いいまくりの笑いまくりだよね。」

悠「だよなぁ。」

神姫「ちなみに腸完全版って何が違うの?」

千世子「ハンガリーにはロージャの伝説が無数にあるのだ「富豪の家から家畜や金を盗み、民衆に分け与えた」「悪さを働く権力者を懲らしめた」……さらには「敵に襲われたハンガリーの工程をロージャが護衛した」というものまであるのだ。」

悠「やむ落ちを完全収録」

亘理『やむ落ち?』

悠「止む無く落とした部分」

摩耶「要するにデレクターズカット版」

亘理『なるほど』

千世子「しかし、ロージャの伝説はほとんどが後世になって創作されたものなのだ。皇帝を援護した話も「校庭は絶対正義の存在である」という皇帝崇拝の思想が、「ロージャが仲間に皇帝暗殺を持ちかけられた」という実在のエピソードと組み合わさってできた話だといわれているのだ。以上、ロージャ・シャーンドルのじゅぎょーだったのだ。」
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