ー奇談ー學校へ行こう10

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「トイレといえばペーパーはダブルシングルどっち派?」

花子『もうトイレ談義はいい!』

摩耶「やっぱりダブルかな」

神姫「どっちでもいいけど、質の悪いのは嫌だわ」

亘理『そして案外盛り上がるという……』

花子『……』

【ウィリアム・テル】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。弓の名手であるうてリアム・テルは「息子の頭の上に乗せた林檎を見事に射抜く」という逸話で日本でも有名なのだ。しかし、テルがヨーロッパの小国「スイス」の人物であり、スイス独立の英雄だという事はあまり知られていないのだ。」

悠「いや、やっぱりトイレの話って色々あるんだよ」

摩耶「わかるね」

亘理『わかっちゃうの?!』

摩耶「トイレのトラブルっていうか小話ってみんな一つくらいあるでしょ」

雨「あるかしら…」

千世子「「うぃりあむ・てる」という名前は英語読みで、ドイツ語がつかわれている故郷では「ヴィルヘルム・テル」と呼ばれているのだ。生まれたのは13世紀後半……ちょうど日本にモンゴルの軍が攻めてきた「元寇(げんこう)」と同じ時期なのだ。テルは山のを駆け巡る猟師であり、クロスボウという機械式の弓の名手だったのだ。」

悠「おれはあるぞ」

神姫「ふざけた話だったら便器に流すわよ」

花子『こんなものを流さないでちょうだい』

悠「ふざけた話……ではある、正確に言うとおれがふざけられた話だが」

摩耶「どゆこと?」

千世子「この頃スイスは、東の隣国「オーストラレア」の支配下にあったのだ。テルの住む地域でも、オーストやリアの役人が我が物顔で振る舞っていたのだ。輝はこの役人の理不尽な指示に従わなかったせいでとらえられ、見せしめの罰ゲームをすることになってしまったのだ。これが有名な、息子の頭上のリンゴを弓で打ち貫くシーンなのだ。」

悠「アレは京都の何処だったかな……急にトイレに行きたくなって。近くで公衆トイレみつけたんだ」

摩耶「ふんふん」

悠「そしたら、トイレの外に自販機みたいなのが置いてあって「トイレットペーパーをご購入下さい」的なことを書いてあったんだ。」

亘理『そこは有料なんだ』

悠「まぁ、仕方ないから買って中に入ったら……業務用のどでかいロールのトイレットペーパーがつけられてるの。じゃあ、なんなんだよ外の自販機は!!」

千世子「結果はご存知の通り見事に成功。しかし輝は罰ゲームを成功したにもかかわらず、挑発的な行動のせいで再度逮捕されてしまうのだ。何とか役人の元から逃げ出したテルは、森の中で役人を暗殺し、町の英雄となったのだ。」

神姫「それはイラッと来るわね」

悠「ちなみに、これがそのポケットトイレットペーパー」

花子『なんで持ってる…』

悠「捨てるのは悔しいし」

摩耶「紙がないときに役立つね」

千世子「テルの活躍はスイス人の「半オーストラリア」感情に火をつけた。スイスの民衆は一斉に立ち上がり、テルは街の英雄からスイスの英雄になったのだ。」

悠「まぁ、こんな感じでトイレの小話は多いはずだ」

花子『はぁ…』

摩耶「花子さんはさぞ持ちネタ多いでしょ?」

花子『そういう妖怪じゃないから!!』

神姫「妖怪っていうかトイレ漫談師ね」

千世子「19世紀、ウィリアム・テルは架空の人物だという研究結果が発表されたのだ。詳しいことは不明だが、その研究によればテルは北欧に伝わる弓の名手の伝説から作られた人物だというのだ。それどころかオーストラリアの役人が悪政を敷いた形跡もないのだ。どうやら、テル伝説の主要人物はほとんどが架空の人物のようなのだ。」

悠「トイレ漫談師目指してみたら?」

花子『目指すか!!』

雨「すごいニッチね」

悠「エッチ?」

雨「黙れ」

千世子「しかし、スイス人がオーストラリアの支配を恐れたり、独立のために激しく戦ったことは事実なのだ。つまりテルは、スイス人の自由を求める思いが生み出した人物だと考えられるのだ。しかしテルが架空の人物だと判明した今でも、スイス人の多くはテルの実在を信じているのだ。テルはスイス人の心に深く根付いた英雄なのだ。以上、ウィリアム・テルのじゅぎょーだったのだ。」
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