ー奇談ー學校へ行こう10

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「あー、何か胃で動いてる気がする」

亘理『うわぁ…』

摩耶「もう一個割ってみよう」
ガシャン!
ゴーレム『ゴォ!』

摩耶「おっと」
トンっ……バリン!

亘理『い、一瞬…』

悠「ぴよこ、あーん。」

千世子「あーん……これ、クッキーなのだ」

神姫「ゼリースライムにクッキーのゴーレム……一応お菓子はお菓子なのね。」

【ホルガー・ダンスク】

千世子「結構美味しいのだ。こほん、さてじゅぎょーしますなのだ。ドイツの北に突き出た半島国家「デンマーク」の地下には、髭の長い巨人の像が眠っているのだ。その名は「ホルガーダンスク」。デンマーク人のホルガーという意味なのだ。彼は今でもデンマーク人に親しまれている英雄なのだ。」

摩耶「ポリポリ、ポリポリ」

悠「この菓子、量が量の上に襲い掛かってくるのがえぐいな」

神姫「正確に言うと食べられに来るだけどね。」

亘理『でも、他にどんなのが出るかワクワクしない?』

悠「……わかる」

亘理『だよね!』

千世子「ホルガー・ダンスクはドイツとフランスを支配していた「フランク王国」の国王、シャルルマーニュと同じ物語に登場することから、8~9世紀ごろの人物だと考えられるのだ。ホルガーが登場する文献はフランスの英雄物語「武勲詩(ジャンソンドジェスト)」であり、この本ではホルガーもフランス語読みで、「オジェ・ル・ダノワ」と呼ばれるのだ。」

神姫「ああいうタイプはギャンブルで破滅するのよね。」

雨「分かる」

悠「神姫も一個割ってみない?」

神姫「まだ、様子見ね」

摩耶「ふぅ……ようやくクッキー食べきれた。」

千世子「ホルガーはデンマークの王族の生まれで美しく立派な騎士に成長したのだ。正義感が強く、間違ったことは自分の君主にでも反論するという実直な性格だったのだ。」

悠「じゃあ、亘理」

亘理『よっし、いいの……でろ!』
カシャン!
魚『……』
ビタン!ビタン!

神姫「うわっ…」

摩耶「緑色でほんのり透けてる」

悠「……グミかな」

千世子「ある時シャルルマーニュの息子に我が子を殺されたホルガーは、シャルルマーニュに復讐を誓って7年間も戦い続けたのだ。しかしシャルルマーニュの国がイスラム教徒に襲撃されると、一転してシャルルマーニュに協力。イスラム教徒たちと勇敢に戦い、巨漢の敵将を打ちり手柄をあげているのだ。ホルガーは個人的な恨みよりも宗教的正義を優先する、騎士の鏡のような人物だったのだ。」

亘理『あ、ホントだ。感触がグミっぽい…』

グミ魚『……』
ビタン!ビタン!

悠「とりあえず食ってみ」

亘理『こ、これに噛みつくの?』

摩耶「じゃあ、ちぎる?」

亘理『……』

千世子「デンマークには、ホルガーがデンマーク東部にある「クロボー城」の地下で眠っていて、デンマークに危機が迫ると復活するという伝承があるのだ。「クロンボー城」の地下にあるホルガーの彫像は、この伝承にちなんだものなのだ。」

亘理『がぷっ……ん!美味しい!青リンゴ味だ』

グミ魚『……』
ぴくぴくっ

神姫「どう考えても悪趣味よね」

モノリス【⦅まかいでのうけはいいそうです。⦆】

雨「魔界って感覚が狂ってるわね。」

千世子「多くの場合ホルガー・ダンスクは、架空の人物だと考えられているのだ。だが一部にホルガーダンスクは実在したという意見もあるのだ。その説によれば実際にホルガー・ダンスクはシャルルマーニュに協力こそしたが、戦いの後は海賊となり、シャルルマーニュが死んだあとフランク王国を荒らし回ったというのだ。」

悠「いや、多分だけど売りだしたら流行るぞきっとこれ…」

神姫「今の日本ならあり得るわね…。」

摩耶「じゃあ、そろそろ神姫さんいってみる?」

神姫「いいけど、私がやったらとんでもないのが出るわよ。レアなのが」

悠「運すらも味方につける女……それが神姫!」

神姫「……」
パキャ!
鳥『ぴきー!ぴきー!』

悠「鳥……ってか、それ、生の鳥じゃね?」

摩耶「お菓子でもなく生の鳥が出る……レアだね」

千世子「ホルガーがデンマークの英雄となった理由は、16世紀にデンマーク人の作家が、ホルガーの実績をデンマーク語でまとめたことに起因する。母国で700年間忘れられたホルガーは、物語の世界でデンマーク人の心に甦ったのだ。以上、ホルガー・ダンスクのじゅぎょーだったのだ」
35/100ページ
スキ