ー奇談ー學校へ行こう10

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「……寒いっす」

神姫「走り込みしてきなさい」

悠「モンスターに襲われそうだからやだ」

摩耶「ここのグラウンドだと出そうだよね。」

雨「出ないわよ」

悠「なんでいい切れる?」

千世子「はーい、ハンニバル・バルカのじゅぎょーの続きなのだ。カルタゴは海の戦いでローマより弱く、ローマを攻めようと思っても地中海を越える方法がなかったのだ。そこでハンニバルは大胆な戦略を実行するのだ。海の戦いを避け、スペインから徒歩でイタリア半島に攻め込んだのだ。」

雨「誰かを襲うモンスターなんかいたら義鷹が食べてるわ」

悠「なるほど……。」

モノリス【⦅ですが、えたいのしれないいきものがたまにかっぽしていますよね⦆】

亘理『え、なにそれ、怖い』

悠「これが妖怪のセリフです」

千世子「ローマはこの動きを想定してい長ったのだ。なぜならイタリアの北部には「アルプス山脈」という険しい地形があり、ココを大群で移動するのは不可能と思われていたからなのだ。ハンニバルから2000年後の19世紀、フランスの英雄ナポレオンですら、イタリアを攻めるためにアルプス山脈を越える行軍は遠征最大の難所だったのだ。19世紀のナポレオンが苦労したことを、ハンニバルは2000年前にやってのけたのだ。」

亘理『私は怖い妖怪じゃないもん!』

摩耶「可愛い妖怪」

悠「巨乳妖怪」

亘理『ガブッ!』

悠「噛まれた…。」

千世子「アルプス山脈では崖から転落したり疲労で倒れたりと多くの兵士が命を落としたのだ。兵士5万のうち、アルプスを越えたのはわずか2万6千。ハンニバル自身も病気で片目を失明しているのだ。しかし厳しい行軍で生き残った兵士は屈強な精鋭になっていたのだ。彼らは「カンネの戦い」などでローマ軍を圧倒する原動力となったのだ。」

摩耶「事実でも口に出しちゃいけないことがあるってことだね。」

雨「そうだけども、違う」

神姫「で、得体のしれないって?」

モノリス【⦅わたしはうごけませんがいきもののけはいはさぐれます。そのなかでここのじゅうにんではないいきもののけはいをかんじることがあるのです。⦆】

悠「まぁ、ここも色んなのが出はいりしてるしな」

千世子「カルタゴ軍の主体は傭兵であり、彼ら傭兵は報酬のために戦争をしているのだ。そのためアルプス越えのようなか酷過ぎる行動、死亡率の高い無茶な作戦は拒否するのが普通なのだ。傭兵たちがハンニバルの指示についてきたのは、何よりハンニバルが指揮官として圧倒的なカリスマ性を持っていたからなのだ。」

悠「おれも圧倒的なカリスマ持ってる」

摩耶「カリスマ(笑)」

モノリス【⦅せいのかりすまということかもしれません。⦆】

神姫「悠の扱いについて分かってきてるわね。」

雨「吸収力が半端ないわね」

千世子「ハンニバルは日常生活によって兵士の信頼を勝ち取ったといわれるのだ。一般兵士と同じ服装、同じ食事をして、宴会のような贅沢は全くしなかったのだ。寝るときは兵士用のマントをかぶり、一般兵士に混ざって地面に転がったというのだ。兵士たちはハンニバルが近くで寝ていると、武器や鎧を手で押さえ、ハンニバルの眠りを金属音で妨げないように気を配っていたという逸話もあるのだ。」

悠「まぁ、性のカリスマでも悪くない」

摩耶「本人はご満足のようです」

亘理『スケベ』

悠「褒め言葉です」

神姫「チッ」

千世子「イタリア半島をほぼ制圧し、ローマ滅亡寸前まで追い込んだハンニバルを打ち破ったのは、のちにローマの最高の将軍と呼ばれる天才貴族「スキピオ・アフリカヌス」だったのだ。彼はあるいみでハンニバルの弟子といってもいいのだ。」

悠「舌打ちが入ったのでお口チャックノリス」

摩耶「遅い気もする」

亘理『また、高級ボールペンが……』

悠「勘弁してくれ。しっかり請求されたんだから…」

亘理『請求されたんだ…』

千世子「スピキオは下級指揮官としてハンニバルと何度も戦い、敵将ハンニバルの戦術を学習していたのだ。彼はイタリアに潜伏するカルタゴ軍を無視してカルタゴ本国を教習したり、ハンニバルに「包囲殲滅作戦」を仕掛けるなど、ハンニバル自身のアイディアを逆用してハンニバルに打ち勝ったのだ。」

悠「最近はなにかと出費が多い」

摩耶「例えば?」

悠「あたらしい電気毛布とか」

摩耶「無駄な出費だね」

神姫「無駄な出費ね。」

悠「必要だよぉ!」

千世子「スキピオの勝利から19年、政治家としても有能さを示したハンニバルはローマに命を狙われ、紀元前183年に毒を飲んで自殺するのだ。いっぽうスキピオは権力闘争に敗れ、やはり紀元前183年に死去したのだ。お互いを認め合った二人の英雄は、奇しくも同じ年に人生の幕を閉じたのだ。以上、ハンニバルのじゅぎょーだったのだ。」
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