ー奇談ー學校へ行こう10

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

ラヴクラフト「ぽりぽり、ぽりぽり…」

亘理『悠ちゃん、悠ちゃん』

悠「ん?」

亘理『あのおじさん、無心でチョコ齧ってる』

悠「……そっとしとけ」

神姫「本当に無心で食べてるわね」

摩耶「甘いのがいいのかな?」

【カール大帝】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。日本が都を京都に移した8世紀後半ごろ、ヨーロッパでは「フランク王国」という国が、国王カール大帝の元で最盛期を迎えていたのだ。キリスト教を国教としていたフランク王国は、周辺の国家や異民族を次々と倒し、ヨーロッパの大半を支配する大帝国を作り上げたのだ。同時にカールは、征服した土地を支配するために、その征服地にキリスト教を普及させたのだ。そのためカール大帝は、キリスト教の宗教的英雄として称えられ、『ヨーロッパの父』と呼ばれることもあるのだ。」

摩耶「砂糖水とか与えたら喜ぶかな」

悠「カブトムシじゃないんだから……雨、砂糖水とか好き?」

雨「飲むか!」

亘理『でも、おじさんが甘いもの好きってなんか可愛いね。』

悠「でた、女の子の謎の可愛い発言……同意できる?」

神姫「私はできない」

千世子「カール大帝は小太りの長身で、髪はふさふさとした銀髪だったというのだ。馬術や狩りのほか、特に水泳が得意で、部下や親せきと勝負しても誰もカールに勝てなかったというのだ。水泳好きのカールは、宮廷にプールを作ってしまうほど熱中していたというのだ。」

摩耶「僕は少し同意できる」

悠「できるんだ…」

雨「わかんないわ」

悠「……」

雨「なに?」

悠「いや、どうしようか言ったら怒る気がするんだけど」

雨「なら黙ってて」

千世子「ちなみにカールという名前はドイツ読みなのだ。日本ではフランス語読み「シャルルマーニュ」のほうが有名なのだ。なぜなら、カールはフランスの英雄物語「ローランの歌」に、シャルルマーニュという名前で登場するからなのだ。」

摩耶「悠君も可愛いってよく言われるよね」

悠「照れますなぁ」

雨「脳か目が腐ってる?」

悠「なんでやねん」

神姫「皮肉よ」

雨「納得したわ」

千世子「「ローランの歌」では、シャルルマーニュは短期で騙されやすい人物として描かれているのだ。これはフランク王国を大国にした史実での業績と比べると、不当に小人物として描かれているように見えるのだ。武器は聖剣「ジュワユーズ」。この剣は一日30回刀身の色を変え、並ぶもののない名剣だったというのだ。」

悠「おれは納得できない」

ラヴクラフト「可愛いといわれたい……のか?」

悠「いや、真顔で聞かれ……」

ラヴクラフト「可愛い……これでいいの、か?」

悠「凄く残念な気分になった」

ラヴクラフト「ふむ…?」

千世子「カール大帝は遠征によって勢力を伸ばしただけでなく学校教育を推奨したり、税制度の確立や紙幣改革を行うなど、政治家としても名高い君主だったのだ。」

摩耶「真顔かつ死んだ眼で感情のない声の可愛い」

亘理『普通に怖い』

ラヴクラフト「ふむ……なら、芸をひとつ……」
うぞぞ

亘理『ひぃっ!手が触手になって絡み合ってる?!』

悠「何がしたい…」

ラヴクラフト「以前、テレビでフーセンで犬などを、模っていた……。プードル……。」
うぞぞ

摩耶「バルーンアートのことかな」

神姫「多分ね。でも、それは絡まってる触手だから」

ラヴクラフト「駄目、か?」

千世子「またカール大帝はキリスト教教会の改革、完成度の高い建築物など、文化面でも素晴らしい業績を残しているのだ。中世ヨーロッパの基礎を作った文化運動は、のちに『カロリング・ルネサンス』と呼ばれるようになったのだ。以上、カール大帝のじゅぎょーだったのだ。」
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