ー奇談ー學校へ行こう9

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「神姫ってさ、好みのタイプとかっていないのか?」

神姫「……」

悠「え、なに?」

神姫「何を意図しての質問なのかと思っただけ…」
チャキキ、シュシュッ…

悠「なぜ、このタイミングてカッターで鉛筆を削りだしたのでせうか…」

神姫「深い意味はないわ」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。前回の続きからでヘラクレスの行った偉業は数えきれないほどあるが、とくに有名なのは『十二の功業』と呼ばれるものなのだ。これはゼウスの妻である女神『ヘラ』の策略によって、自分の子供を殺してしまったヘラクレスが、その罪を償うために行ったものなのだ。」

亘理『私の好みのタイプは……』

摩耶「悠君」

亘理『ふぁ、ふぁーー///!』
ぺちぺち
摩耶「あははは」

悠「……アレは置いといて」

神姫「相手したげなさいよ」

千世子「十二の功業の内容は様々だったのだ。ただし多くは、英雄物語には定番の怪物退治なのだ。「ヒュドラ」という多頭の蛇や、近隣を荒らしていた凶暴な牛、ライオンや大猪など、ヘラクレスは多くの怪物を倒しているのだ。」

摩耶「まぁ、でも、神姫さんの好みは確かに気になるね」

雨「むちゃくちゃ難易度が高いんでしょうけどね」

神姫「普通よ。普通。」

悠「普通っていうと、中身入りのドラム缶の直撃受けても平気だったり、女の子にしか見えない男の子だったり」

亘理『それ普通?!』

千世子「十二の功業には、「30年間全く掃除していない家畜小屋を掃除する」という変わり種もあったのだ。家畜のくそが散乱し、悪臭漂うこの小屋を一日で掃除することは、ほぼ不可能であったが、ヘラクレスは小屋に穴をあけ、近く流れる川の流れを変えて汚物をすべて押し流してしまい、見事に試練を達成したのだ。ヘラクレスは怪力ばかりが強調されがちだが、賢い英雄でもあったのだ。」

神姫「ずいぶんと限定的な特徴ね」

悠「美少女系少年なら摩耶もだけどな」

摩耶「僕の場合は病少年だけどね。あははっ」

雨「めっちゃ後ろ向き……」

悠「健康!摩耶君は健康ですよ!!」

千世子「ヘラクレスの賢さを示すエピソードは他にもあるのだ。十二の功業には、地球を支える巨人アトラスの娘から「黄金のリンゴを手に入れる」という物があったのだ。ヘラクレスはアトラスに、自分がかわりに世界を支えるから、その間に娘からもらってくるように頼むのだ。」

神姫「確かに摩耶君は悪いところないわよね」

摩耶「そうかな。黒い部分めちゃくちゃあるよ?」

亘理『自分でいっちゃうんだ…』

悠「そんな部分もおれは受け止めるよ!」

摩耶「物理で受け止め、お願いね♪」

悠「お、おう…」
ガクガク

亘理『悠ちゃん足ふるえてる…』

千世子「アトラスは林檎を手に入れたが、再び世界を背負うのが嫌になり、ヘラクレスにそのまま世界を背負い続けるように要求したのだ。ヘラクレスは要求を受け入れたふりをすると「姿勢を変えたいので、少しだけ世界を背負ってくれ」とアトラスをだまし、再びアトラスに世界を背負わせ逃亡。さらには黄金のリンゴも手に入れたのだ。今日はここまでで、続きは次回なのだ。」
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