ー奇談ー學校へ行こう9

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「雨だな」

摩耶「雨だね」

悠「雨雨、降れ降れ」

摩耶「悠くんが~」

神姫「這いつくばってて楽しいなぁ」

悠「なんでや!」

【ペルセウス】

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。ギリシャ神話は英雄の宝庫なのだ。今回じゅぎょーする英雄ペルセウスは、ギリシャ神話の中でもごく初期に活躍した人物なのだ。そして姿を見ると石にされてしまう怪物「メドゥーサ」を退治した英雄として日本でも有名なのだ。」

悠「なんでおれが雨の中、這いつくばると楽しいんだ」

神姫「悲観的じゃない」

摩耶「他人の不幸は蜜の味ってやつかな」

悠「気持ちはわかるけど」

亘理『わかるの?!』

千世子「ギリシャ神話の英雄の多くは、神と人間の間に生まれた半神半人なのだ。ペルセウスも例外ではなく、父親はギリシャ神話の最高神ゼウス。そして母親は人間の女性でなのだ。ペルセウスは母親のもとで勇敢な青年に育ったのだ。」

悠「やっぱり他人の不幸って結局は他人には笑い話じゃん」

神姫「笑えないような不幸もあるけどね」

悠「それは不幸でしんどい話だな」

摩耶「悠君の場合はたいていが笑い話になるから問題ないね」
 
悠「そんな、涙がちょちょぎれる話ばっかりだよ」

千世子「ペルセウスはいくつもの怪物退治で知られる英雄なのだ。その中でも最も有名なのが、髪の毛の代わりに蛇を生やし、見たものを石にしてしまう三姉妹、「ゴルゴン」のひとりメドゥーサを対峙した物語なのだ。ペルセウスは神々のお気に入りであり、神様から様々な援助を受けて戦ったのだ。勝利の女神アテナからは黄金に輝く盾、旅人の守護神ヘルメスからは、ゴルゴンの首をも切り落とす黄金の曲刀と、履けばワシよりも早く飛べる、翼のついた黄金の靴を借り受けたのだ。さらに森にすむニンフから、姿を消せる帽子とゴルゴンの首を入れる魔法の袋をもらっているのだ。」

神姫「悠はあれよ、ひとをイラつかせる話って名目にしといたら完璧」

悠「人を幸せにする話?」

神姫「今の段階で私はイラッとしてる」

悠「……肩とか揉もうか?亘理が」

亘理『まさかの私?!』

悠「神姫がおれを触れさせるわけないだろ」

千世子「ペルセウスは神の道具を使って障害を潜り抜けると、メドゥーサと激突。直接メドゥーサを見て石にならないよう、アテナの黄金の盾を鏡代わりに使い、メドゥーサの姿を盾に映しながら戦い、メドゥーサの首を切り落としたのだ。」

摩耶「自分でいってて悲しくない?」

悠「誰かが笑ってくれるならそれで十分」

神姫「誰も笑ってないけどね。あ、首とか刎ねたら笑うかも」

悠「ゴルゴンでも死ぬのにおれも死んじゃうよ」

アリス『ふふっ』

千世子「メドゥーサ胎児化すら帰る途中、ペルセウスは今度は海の怪物の退治を成し遂げ、アンドロメダという美しい女性を助けて妻にしたのだ。ペルセウスは死後、妻のアンドロメダとともに星座に加えられたのだ。これがペルセウス座とアンドロメダ座なのだ。」

摩耶「その話だけで笑ってるアリスちゃん」

悠「死を呼ぶ笑いはNothank you」

神姫「ネイティブな発音にイラッとする」

亘理『悠ちゃんてもしかして英語強い人?』

神姫「頭が弱いから違うわよ」

千世子「ゴルゴンの首は、ペルセウスによって斬られた後も、人を石に変える魔力を持ち続けたのだ。ゴルゴンの首はペルセウスからアテナに渡され、彼女の盾「アイギス」に取り付けられたというのだ。しかし別の物語では、ゴルゴンの首はその魔力を恐れたペルセウスによって海に捨てられたといわれるのだ。首は今でも海の中を漂流しており、転がりながら海の宝石である「サンゴ」を生み出しているというのだ。以上、ペルセウスのじゅぎょーだったのだ。」
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