ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(2/8/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「うー…さむっ」

神姫「また?カイロくらい準備できないの?」

悠「中にヒートテックは着込んでるんだけどな。」

神姫「はぁ…はい、カイロ」

悠「さんきゅ。」

摩耶「悠くん、レギンスは?」

悠「いやぁ、それはちょっと…」

花描「股引きとかか?」

悠「おれはジジイか」

千世子「それじゃあ今日のじゅぎょーを始めるのだ。龍の姿をした弁才天があらわれる物語として日本でももっとも有名なものは、平安時代末期に覇権をかけて戦った武士の一族、平氏と源氏の戦いを描いた物語「源平盛衰記」にあるのだ」

摩耶「平家と源氏かぁ」

千世子「平家の名のある武士が、源氏との戦いで必勝を祈願するため、琵琶湖北部に浮かぶ「竹生島」を訪れたときのこと。必勝祈願を終えた平家の武士は、得意の琵琶を弾いていたのだ。すると武士が着ていた衣の袖に、白い龍があらわれたのだ。この龍こそ竹生島に祀られている弁才天だったのである。武士はこれこそ吉兆であると喜んで、意気揚々と出陣していったというのだ。」

摩耶「ずっと気になってたんだけど弁財天と弁才天はちがうの?」

悠「いや、これは「才」って音が、財産の「財」に通じてるからだそうだ。そのせいで財宝の神様としても崇められるようになった。つまりダジャレだな」

千世子「しかし、結果はご存じのとおり、平家は源氏との戦争に敗れ、滅亡してしまったのだ。つまり白龍は吉兆ではなかったわけなのだ。」

悠「白龍は社長の嫁だからな吉兆ではないだろ」

摩耶「青眼白龍(ブルーアイズホワイトドラゴン)!」

千世子「ではなぜ弁才天は白龍の姿であらわれたのか?これについてはアジア龍の研究書「図説龍の歴史大事典」の著者、笹間良彦氏が面白い推測をしているのだ。」

花描「そういう本てほんとうにあるのか?」

悠「あるぞ。でかい本屋とかにいけば多分みつかる。」

千世子「源平の戦いを描いた絵などをみればわかるとおり、当時の平氏は自分達の旗印として赤い旗を使っていたのだ。いっぽう源氏の旗印は白なのだ。つまり弁才天が白龍としてあらわれたのは、吉兆は吉兆でも「白の旗を掲げる源氏にとっての」吉兆だった、つまり源氏がかつという予言だったというのだ。以上、弁才天のじゅぎょーだったのだ。」

花描「敗北予告の昇龍とは悲しいな」

悠「まぁ、社長もブルーアイズは出せるけど、負けるじゃん」

摩耶「かなりひどい事いうね。」
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