ー奇談ー學校へ行こう9

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ラッキースケベ起きないかなぁ」

義鷹「……」

悠「なんだね、義鷹君。その馬鹿にしたような眼は」

摩耶「馬鹿にしたようなじゃなくて馬鹿にしてるんだと思う」

悠「そんなまさかっ。はっはっのはー。」

義鷹「変なところでポジティブだよな…」

【ナハツェーラー】

千世子「「死体が吸血鬼になっても墓から出さなければ安全!」そんな勘違いをしてはいないだろうか?会わなければ安全、地上に居なければ安全という慢心を粉々に打ち砕く、危険な吸血鬼がドイツに居るのだ。墓の中に居ながらにして地上の人間を攻撃できる吸血鬼それが「ナハツェーラー」なのだ」

亘理『悠ちゃんの場合ラッキーっていうかスケベ』

悠「男の子はスケベなんですよ」

亘理『そうは見えない』

摩耶「にこにこ」

悠「まぁ、おれは紳士だからな。見えないのも仕方ない」

雨「お前じゃねーよ」

千世子「吸血鬼ナハツェーラーが地上に出てきた場合、自分の生前の家族のもとに豚の姿で現れ血を吸うというのだ。また教会の鐘を鳴らして、その音を聞いたもの全員を殺したり、自分の影を他の人間の影と重ねて、重なった相手を呪い殺すといった能力ももっているのだ。」

神姫「そもそもラッキースケベって……公開羞恥プレイでしょ」

悠「違うよ!それはそれで楽しそうだけど…」

亘理『悠ちゃん?』

悠「コホン、ラッキースケベは偶然が起こした奇跡の瞬間だよ」

摩耶「都合のいい奇跡だね」

千世子「だが、ナハツェーラーが真に恐ろしいのは墓の中からでも人間を攻撃できることなのだ。棺から出ることもできず、腹を減らしたナハツェーラーは、空腹のあまり自分が着ている死装束を食べ始め、さらには自分の肉体まで食べてしまうのだ。ナハツェーラーが死装束や自分を食べ始めると、生前の家族から生命力が徐々にに失われ、衰弱して死にいたるのだ。」

悠「だからこそ奇跡と呼ぶのだ」

神姫「ねぇ」

悠「はい。」

神姫「殴られるのと蹴られるのどっちがいい?」

悠「奇跡的にどっちも無しの流れで」

神姫「奇跡は起きないから奇跡なのよ」

千世子「墓から出てこないため、人間に呪いをかけているナハツェーラーをさがすのは難しいのだ。ドイツでは家族が原因不明で衰弱したら、ナハツェーラーになった死者がいないかどうか調べなければいけないのだ。まずは墓をめぐって、ナハツェーラーが自分の衣服を食べる咀嚼音を探す。音を立てている棺を見つけたら開いてみるが、このとき遺体が、片手の親指をもう片方の手で握り、左の眼が見開いていたら、遺体がナハツェーラーになった証拠なのだ。」

悠「……義鷹」

義鷹「何だ」

悠「ヘルプ」

義鷹「覚悟を決めろ。これはお前の物語だ」

神姫「ということよ」
パァン!
悠「ぴぎゃん!」

千世子「ナハツェーラーを見つけたら、口の中にコインを詰め、斧で首を両断するのだ。そして死装束の布地から、名前を書いてある部分を取り除くのだ。こうすればナハツェーラーは滅び、二度と人間を襲わなくなるのだ。」

摩耶「ビンタされたときにラッキースケベ発動しないと」

悠「任意発動できるならしてるよ…」

亘理『でも、そしたら次はビンタくらいじゃ済んでないと思う』

摩耶「そして更にラッキースケベ発動」

義鷹「死ぬまでループか?」

悠「それはもうラッキーが無くなってる…」

千世子「死者がナハツェーラーにならないための予防策も重要なのだ。ナハツェーラーは棺の中で屍衣や自分の肉を食べて吸血鬼になるので、口の上に屍衣が載らないようにする方法や、死者の口の中に小石やレンガなどを入れ、口を閉じられないようにする対策が取られるのだ。他にも咽をあらかじめハンカチなどできつく締めておき、食べた物が咽を通らないようにするという対策法もあるのだ。以上、ナハツェーラーがのじゅぎょーだったのだ。」
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