ー奇談ー學校へ行こう9

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「最近よく飯食うんだよな。」

摩耶「悠君はよく食べる方じゃない」

悠「いや、そうじゃないんだ。無性に白米を食うんだよ」

摩耶「オカズは?」

悠「漬け物とか」

摩耶「あー、オカズはって聞いてエロいこといわないなら。本当に白飯スキーなんだね」

【クドラク】

千世子「じゅぎょーしますなのだ。吸血鬼クドラクは、悪や闇といった、この世の負の部分を象徴する吸血鬼なのだ。イタリアから海を隔てて東側の対岸にあるスロベニアという国や、その南にあるイストラリア半島という地域では、疫病や凶作、不幸などの悪いことは、すべて吸血鬼クドラクのせいだと考えられていたのだ。もちろんクドラクは、吸血鬼なので、罪のない人や無防備な人を襲ったり、血を吸うこともあるのだ。牛や豚、馬に変身したり、炎の輪に変化する能力ももっているのだ。」

亘理『お腹すいてるの?』

悠「んー、何て言うか夜中にふと目が覚めて白飯を食いたくなるんだ」

義鷹「それ、腹減ってるだけだろ」

雨「意地汚い」

悠「……」
ぐにぃー!
雨「いひゃい!いひゃい!ふぁにふぉふぅる!」

悠「晩飯とかしっかり喰ってるんだけどなぁ」
ぐにぃー!
雨「ひゃめふぉ、ふぁなふへっ!」

千世子「クドラクは、他の多くの吸血鬼と違って、死んだ人間が変化する吸血鬼ではないのだ。人間の胎児は、母体の中で「羊膜」といううすい膜につつまれて育ち、時期が来ると羊膜が破れて出産されるのだが、たまに羊膜に包まれたままの子供が生まれてくることがあるのだ。このとき、羊膜の色が黒または赤だった場合、子供が一定の年齢になると、先輩クドラクがその子供を迎えに来て、クドラクにしてしまうのだ。ただし、出産直後に外に向かって「クドラクが生まれたよ!」と叫べば、子供がクドラクになるのを防げるといういいつたえもあるのだ。」

摩耶「よく伸びる頬」

悠「なかなかのツマミ心地だった」

雨「いつか後悔させてやるっ!」

神姫「毒とか毒とか毒ね」

雨「……毒しかないみたいじゃない」

神姫「他にあるの?」

悠「糸で自縛プレイとか」

雨「なんで自分で自分に糸を張るのよ!」

千世子「クドラクと呼ばれるのは吸血鬼ばかりではないのだ。ある地域では、クドラクは吸血鬼ではなく「魔術師(魔女)」だとされているのだ。人間に混じって村で暮らすこともあるが、色が黒いため簡単に見分けられるというのだ。また別の地域では、クドラクは「黒い狼」、つまり人狼なのだ。東ヨーロッパでは、人狼は死ぬと吸血鬼になるという伝承があり、人狼と吸血鬼はきっても切れない関係どころか、同じ存在だといっても過言ではないのだ。」

亘理『それでご飯、どのくらい食べるの?』

悠「んー、夜中二時ころに二合ぐらい?」

摩耶「ガッツリだね」

亘理『お茶碗いっぱいとかじゃなくてふつーにガッツリ…』

悠「ウチはほら、バリバリでかい電子ジャーで炊くからご飯はいつでも有るんだよ」

摩耶「食べざかりがいるもんね。」

千世子「実はクドラクには、クルース二クという天敵がいるのだ。クルースニクとは善の象徴であり、悪の象徴であるクドラクと対なる存在なのだ。両者は闘うことを宿命づけられているのだが、この戦いは必ずクルーニスクが勝ち、クドラクが勝つことはできないのだ。」

神姫「それに加えて悠まで食べざかりとか……嫌ね。」

悠「嫌ってなんだよ。おれだって食べざかりだよ!」

摩耶「鉛玉を?」

悠「No弾丸。YESご飯。」

亘理『夜中起きても寝て我慢したら?』

悠「欲望に勝てないんだ」

千世子「ただしやっかいなことに、クドラクは非常に生命力が強く、ただ倒しただけではさらに強力になって復活してしまうのだ。クドラクを完全に滅ぼすには、バラ科の植物であるセイヨウサンザシで作られた杭を心臓に打ち込むか、膝下にある腱を切って魔装する必要があるのだ。以上、クドラクのじゅぎょーだったのだ。」
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