ー奇談ー學校へ行こう9

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「寒いぃ……寒いよォ…」

摩耶「もう駄目だねこれ」

神姫「水をぶっかけたらトドメになるかしら」

悠「容赦ないわぁ。優しいないわぁ。」

義鷹「火であぶってやろうか?」

悠「食べられる?!」

【ヴリコラカス】

千世子「じゅぎょーしますなのだ。バルカン半島の南端にある、温暖で歴史ある国ギリシャ。このくにでは、吸血鬼は「ヴリコカラス」と呼ばれているのだ。」

義鷹「喰うなら生で喰うよ」

悠「おのれ妖怪!」

摩耶「妖怪でしょ」

悠「あぁ、そうか」

亘理『おのれ妖怪!』

義鷹「お前も妖怪だろ」

千世子「ヴリコカラスは、人間が死んだときに着せられる白い服「屍衣(shroud)」を身につけているのだ。外見的特徴は、赤い顔をして爪が長く、皮膚が太鼓に張った皮のように硬く張っていて、生前よりも太っているのだ。また、足が馬やロバと同じような形になっているヴリコカラスもいるというのだ。」

亘理『私は悠ちゃんを食べないもん!』

神姫「よく齧ってるけどね。」

悠「あぁ、あれはやっぱり食われてたのか」

亘理『違うよ!』

雨「食べたら死ぬわよきっと、毒で」

悠「誰が有毒、いや、悠毒やねん!」

神姫「死刑」

千世子「死後ヴリコカラスになるのは、狼が殺した羊の肉を食べた者、不自然な死に方をした者、葬儀が適切に行われなかった者、生前に呪いを受けたものなど多岐にわたるのだ。」

悠「今のダメっすか?神姫さん的にダメっすか?」

神姫「世界が認めても私は認めないわね」

悠「あらまぁまぁ…。ねぇ?」

義鷹「いや、尋ねられても知らん」

悠「義鷹、寒いんだけど助けてくれ」

義鷹「だから火で炙ってやろうかといってるだろ」

千世子「吸血鬼を滅ぼすときの定番は「心臓に杭を打ち込む」ことだが、ギリシャでは行われないのだ。もっとも一般的な方法は遺体を焼いてしまうことなのだ。そのほかにも、心臓をえぐり出して酢で煮る、全身を切り刻むなどの方法がとられるのだ。」

悠「それってだから喰う準備だよね」

摩耶「無限ループって怖くね?」

亘理『じゃあ、悠ちゃん。私が背中に憑いててあげようか?』

悠「それ、余計背筋が冷たくならないか?」

摩耶「でも、おっぱいが当たるよ?」

悠「確かに。」

千世子「また、近くに無数の小島を有するギリシャでは、無人島に吸血鬼化した遺体を埋めることもあるのだ。吸血鬼は流れる水を渡れないので動きだした死体は海を渡れず、永遠に無人島に閉じ込められるのだ。」

雨「何に納得してるのよ」

悠「おっぱいは世界を救う」

神姫「悠は救われないわよ」

悠「誰なら救ってくれる?」

摩耶「救われたいなんて願わないでよ。悠君は自分で自分を救済しなきゃ!!」

悠「えぇ……」

千世子「一般的にヴリコカラスは、墓地で人間の首を絞めたり、寝ている人間の上にのしかかって胸から血を吸ったり、夜に民家を訪れて住人を呪い殺すという行動パターンを持つのだ。この呪いは、扉の外から家にいる人間を呼んで、返事をするとその人は死ぬという強力なものだが、ヴリコカラスは非情に短気な性格なので、相手に一回しか呼び掛けないのだ。そのためギリシャでは、一回目の呼びかけは無視、二回呼ばれたら人間なのでドアを開けるという習慣があったのだ。」

悠「おれは救われるかなぁ」

亘理『私が救ってあげるよ!』

義鷹「お前はまず自分を救えよ」

亘理『うっ…』

悠「義鷹、それはちょっとダメだろ」

亘理『うぇーん、悠ちゃん。あの獣がイジメルー!』

義鷹「誰が獣だ」

ヴリコカラスは、地域や伝承ごとに、同じ種類の怪物とは思えないくらい幅広い特徴を見せる吸血鬼なのだ。たとえば地方によっては、次のような逸話があるのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ。」

・墓場や道端、ぶどう園などに現れたヴリコカラスをみると、それだけで死んでしまう。

・ヴリコカラスは死体に悪霊が入ったもの。滅ぼされずに40日過ぎると手に負えなくなる。

・好物は人間の臓物である。特に肝臓が好きだという。

・ヴリコカラスは、頭領が居て、部下のヴリコカラスといっしょに人間が知らない歌を歌い、踊りながら現れる。妊娠期間7ヶ月で生まれた子供は、強制的に歌い踊らされてしまう。

・昼間に5~6人連れで現れ、畑の豆を食べまくる。

・生前の妻の寝どこに現れ、性交渉を迫る。

・外出中の家に入り、家財道具を投げ散らかす。

・夜中に鏡を見たり、口笛を吹くとヴリコカラスがあらわれる。
21/100ページ
スキ