ー奇談ー學校へ行こう9

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ふぁぁ……」

摩耶「大あくびしてると口の中に何か放り込みたくなるよね。」

悠「美味しいものがいいな」

摩耶「ホヤの塩からとか?」

悠「渋いな…」

神姫「私は投げ込まれたらキレると思うわ」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。サンジェルマンの続きからなのだ。経歴だけ見ても謎の多いサンジェルマンだが、彼にまつわる不思議な逸話は、こんなものでは終わらないのだ。なんとサンジェルマンは、数千年の時を生きる不老不死の存在だという仮説があり、彼の在命中も、上流階級の人々にそう信じられていたのだ。サンジェルマンが活躍したのは、イケる吸血鬼アルノルト・パウルの報告書が提出された1727年から50年もたっていない時期なのだ。もしサンジェルマンが吸血鬼伝承の本場であるバルカン半島で活躍していたら、吸血鬼扱いされたことは間違いないのだ。」

悠「そういえばサンジェルマン公ってドリフターズにも出てきてたな」

神姫「オカマでね」

摩耶「アレのノブノブ好き」

悠「摩耶は与一じゃない?色んな意味で」

摩耶「色んな意味での色んな意味を聞きたいなぁ」

悠「男の娘!!」

雨「力強く言い切ったわよコイツ…」

千世子「サンジェルマン自身が語ったことによれば、彼は「不老不死の霊薬」を飲んだため、いつまでも若々しく、死のうとしても死ねないというのだというのだ。らに薬の力で、サンジェルマンは食事を取る必要がないと自称し、事実、すくなくとも人前で食事を取ったところは目撃されてないのだ。」

悠「食事はしたいよな、食は生きるからだ」

摩耶「ホヤの塩から?」

亘理『なんか拘ってる?』

摩耶「ボクはホヤ嫌いだけどね。あと、ナマコの酢漬けとか」

悠「ぬるぬるしてるやつか?」

摩耶「あ、そうかも。」

千世子「不老不死のほかにも、「ダイヤモンドを作りだす能力があった」「宝石にあった傷を取り覗いた」などの超常的な逸話が複数あるのだ。こうしたサンジェルマン伝説の中には、彼と政治的に敵対していた勢力が、サンジェルマンを「うさんくさい人物」と印象付けて失脚させようと広めたものが多いのだが、サンジェルマン本人は、それを肯定も否定もせずに放置したため、かえってサンジェルマンの伝説の説得力を高める結果になってしまったのだ。」

神姫「私は特別好きじゃないけど食べれないことはないわね。」

悠「おれもそんな感じかな」

摩耶「悠君はぬるぬるすきでしょ?」

悠「どんなぬるぬるかによるかな」

摩耶「ローション」

悠「……えへっ」

千世子「近代にはいると「不死の人」の伝説があるサンジェルマンを吸血鬼として取り入れた作品が発表されるのだ。アメリカの作家チェルシー・クイン・ヤーブロの小説「ホテル・トランシルヴァニア」なのだ。」

亘理『悠ちゃん!』

悠「なーに?」

亘理『えーと……スケベ!』

悠「イエスアイアム!」

神姫「頭からタールかぶればいいのに」

千世子「1978年に発表されたこの作品では、サンジェルマンは不思議な力を持った古代の吸血鬼なのだ。吸血鬼としてのサンジェルマンは、不老不死であり、女性から少しだけ血を頂く代わりに、不思議でロマンティックな能力でお返しするのだ。また「吸血鬼は地元の土の上で寝なければならない」という弱点を解決するため、靴のかかとに地元の土を入れておくことで、昼間も歩くことができ、故郷から遠く離れて旅をするという、実にスマートな解決策を生みだしているのだ。」

悠「タールマンになっちゃう」

亘理『タールマン?』

摩耶「バタリアンに出てくるゾンビ」

悠「脳みそ食いてぇ」

神姫「あれもなんでもないところで食い殺されるシーンが多いのよね」

千世子「「ホテル・トランシルヴァニア」は、743年のパリの舞台に、サンジェルマンと悪魔崇拝者が戦うというストーリーになっており、サンジェルマンの描かれ方は冒険活劇のヒーローそのものなのだ。」

悠「ちょっとエロシーンもあるしな!」

神姫「……」
ガッ!
メリリ
悠「おぉ……おれの頭がパーンしそう…」

亘理『余裕あるね…』

悠「強がってないと漏らしてる」

神姫「やめい」
スパンッ!
悠「がふっ!」

千世子「この後も、ヤーブロは「サンジェルマン年代記」「生命の家より」など、サンジェルマンを主人公にした物語をいくつも発表しているのだ。残念ながら日本語訳が発売されていないが、さまざまな吸血鬼について書いた「吸血鬼の辞典」など、一部の関連書で、物語のあらすじなどを読むことが出来るのだ。以上、サンジェルマンのじゅぎょーだったのだ。」
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